リーグ最下位→台湾球団が取り入れた“日本式” 副GMは元虎戦士…球速差以外にあった差

元阪神の林威助氏が富邦の再建に挑む
台湾プロ野球(CPBL)の富邦ガーディアンズが、日本式野球の導入で巻き返しを図る。今季から日本で実績を積んだ指導者を多数招へい。その背景には、球団副領隊(副GM)・林威助氏の強い問題意識があった。
昨季、チームは最下位に低迷。雪辱を期す今季は、オリックス、楽天でプレーした後藤光尊監督が指揮を執り、ヘッド兼打撃コーチに元中日の森野将彦氏、バッテリーコーチに元ソフトバンクコーチの的山哲也氏、2軍監督には元楽天コーチの酒井忠晴氏が就任するなど、日本人指導者が一気に増えた。編成を含む野球部門を統括し、現場とフロントの橋渡し役を担う林氏は、日本人指導者を増やした理由について「日本の細かい野球を教えてほしい」と語る。
高校時代に福岡・柳川高へ留学し、近大を経て2002年ドラフト7位で阪神に入団。2013年までプレーした後、台湾に戻り中信兄弟でプレーしたのち監督も務めた。長年日本の野球を経験していると「こういう場面ではこういうサインが出る」という予測がつくため、準備もできていたと振り返る。指揮官として痛感したのが、そうした戦術理解の差だった。
「監督をやっていた時、サインを出すと選手はミスをするんです。一つの場面で出るサインは、ある程度パターンが決まっています。それなのに『そんな間違いをする?』というプレーが起きてしまう。バントのサインを出しても結構失敗をする。そうなると、サイン自体が出しにくくなってしまいます。『こういう時にはこういう作戦がある』『こういう点の取り方がある』というのを選手に知ってほしい。そのためにも、日本の野球を知る指導者が必要だと思いました」
技術面での違い…球速の差がなくても「伸びがないんです」
技術面でも違いを感じた。2014年から台湾球界に復帰し中信兄弟でプレーしたが、打席に立ったとき、投手の球の質の差を実感したという。
「当時の日本には150キロを出す投手は多くなかった。140キロ後半で速いピッチャーでした。台湾に帰ってきてスピードガンを見ると、140キロは普通に出ている。それなのに、日本のピッチャーと比べると伸びがないんです。ホームベースを通過する時に球が少し垂れる。下半身や肩甲骨、股関節の使い方が、日本の投手と違うのではないかと思いました」
チームには日本人選手も在籍する。鈴木駿輔投手に加え、今季から社会人のENEOSでプレーしていた阿部雄大投手も育成で加入。日本人選手がもたらす影響は、投手だけにとどまらないと見ている。
「台湾のキャッチャーは、日本のような配球の考え方がまだ十分ではないと感じます。日本人投手の『こういう球を投げたら、次はこういう球を使う』という考え方を、キャッチャーにも伝えてほしいと思っています」
日本で約20年にわたりプレーしてきた林氏。その経験を母国球界に生かそうと、今は日本野球の技術や考え方を台湾に伝える役割も担っている。日本人指導者の招聘にも、そんな思いが込められていた。
(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)