大阪桐蔭を牽引する「4番・DH」 背番号「3」→「20」の屈辱…名将が語る谷渕への思い

英明との準々決勝で1本塁打を含む3打数3安打2打点
高校DHの“申し子”となるのか。第98回選抜高校野球大会で、過去に春4度・夏5度の全国優勝を誇る大阪桐蔭がベスト4入り。29日の準決勝では専大松戸(千葉)と対戦する。高校野球にも今大会から指名打者(DH)制が採用され、「4番・DH」に座る谷渕瑛仁(たにぶち・えいと)内野手(3年)は28日現在、3試合で打率.455(11打数5安打)、1本塁打5打点と猛打を振るっている。
27日の英明(香川)との準々決勝。右投げ左打ちのスラッガーで4番を務める谷渕は、1-2とリードされて迎えた3回、2死二塁の好機に逆方向の左中間へ同点適時二塁打を放った。
そして6回には右翼席へ勝ち越しソロ。「行ったかな、と思いました」と振り返る会心の一撃で、谷渕は右手を突き上げながら、ゆっくりダイヤモンドを回り始めたが、三塁ベース手前から急にスピードアップした。西谷浩一監督は「チームメートから『調子に乗るな』という感じで声をかけられ、われに返ったようです。私からも『ガッツポーズをするところではない。勝ってからにしなさい』と注意しました」と説明する。
そして、いったん同点に追いつかれた後の8回には、無死一塁でバントの構えからバスターを鮮やかに決め、左翼線へ二塁打。次打者の藤田大翔捕手(3年)の決勝中犠飛につなげたのだった。
この日は1本塁打を含む3打数3安打2打点。谷渕自身が「歴代の大阪桐蔭の4番は素晴らしいバッターばかりで、どちらかというとホームランやロングが多いと思いますが、自分は場面に応じたバッティングを目指しています。単打や小技もしっかりできたらと思います」と語る通りの打撃内容だった。
中学時代は捕手で、昨秋の大阪府大会や近畿大会ではサード、ファーストを守ったが、今大会は専らDH。西谷監督は「決して守備がダメな子ではありません。もともとは捕手で、内野も外野もできる器用な子ですが、今はメンバーの構成上この形を取っています」と強調する。
高校DH初本塁打を放ったのは専大松戸の9番・吉田だった
もっとも谷渕自身は「守備は得意でないので、DH制はありがたいかなと思います。自分としてはDHだと、楽な気持ちで打席に入れます」と心境を明かす。「守備もある程度ならできますが……ある程度なので」とあっけらかんとした表情を浮かべるのだった。
昨秋「3」だった背番号は、今大会ではベンチ入りメンバーで最も重い「20」。西谷監督は「冬場に腰の状態が悪くて思うように練習ができなかったので、奮起を促したくて、あえて『20』にしました。本人は悔しかったと思います」と真意を明かしている。
橋本翔太郎コーチは「高校生はDHというものに、向いている、向いていない以前に、まだ慣れていないと思います。他のチームで『9番・DH』というケースが目立つのも、そのためでしょう。そういう中で結果を出している谷渕は大したものです」と評価した。
確かに“高校DHの初本塁打”は、専大松戸の「9番・DH」吉田颯人捕手(2年)が26日に九州国際大付(福岡)との2回戦で放ったが、谷渕は堂々たる「4番・DH」として好成績を残し、一発も放った。
一方、各校の監督の間では「DH専門で守らない選手をつくってしまうと、将来の可能性を狭めることにつながる」と懸念する声もある。大阪桐蔭の指導者陣も、谷渕をDHに固定するつもりは毛頭ない。今のところ“高校球界きってのDH”。今後どんな選手に育っていくだろうか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)