異国挑戦も家族に「めっちゃ反対された」 大企業退社し再出発…待ち続けるNPB指名

ENEOSで活躍後…富邦ガーディアンズに入団した阿部雄大
台湾プロ野球(CPBL)の富邦ガーディアンズに今季加入した阿部雄大投手が、新天地での挑戦に懸ける思いを語った。社会人野球の名門ENEOSで7年間プレーしながらもNPB入りが叶わなかった左腕は、「プロの舞台でプレーしたい」という夢を胸に、異国の地で新たな一歩を踏み出した。
山形・酒田南高からENEOSに入社し、1年目から公式戦に登板。怪我に苦しみながらも投球フォームの改善に取り組み、球速アップを実現するなど着実に成長を遂げてきた。しかし、ドラフトで名前が呼ばれることはなかった。
「プロに行きたかったですけど、何年も指名がなかったので……」。冷静に受け止めてきたつもりだが、6年目を終えた時はさすがに落ち込んだという。それでも周りに助けられながら「あと1年頑張ろう」と自分を奮い立たせてきた。そんな中で舞い込んだのが、台湾球団からのオファーだった。「声をかけてもらった時に、やっぱりプロでやりたいという気持ちが強かったです」。国は異なるが、その決断に迷いはなかった。
台湾は高校時代の修学旅行で訪れたことがある程度。「まさか自分が台湾でプレーするなんて思っていなかった」と振り返る。当時は食事も合わなかったが「今は何でもおいしいです」と笑顔を見せる。言葉の壁もあるが「みんなが教えてくれるので、生活しながら覚えていきたいです」と前向きだ。
安定した将来を“捨てる”ことに「台湾でもお金もらえる」
ENEOS退社と台湾挑戦の報告は、すべてが決まった後に家族へ伝えた。「『行くわ』と言ったら、めっちゃ反対されました」と苦笑いを浮かべる。それでも「どうせもう決めているんでしょ」と最後は背中を押してくれた。安定した将来を捨てての挑戦だが、「台湾でもお金はもらえるので、そこはあまり考えていないです」と言い切る。「ENEOSでも『あと3年できたらいいかな』と思っていました。新しい環境でプレーしたい気持ちが強かったです」と胸の内を明かした。
実際に台湾の打者と対戦し「少しでも甘く入るとすぐに持っていかれます」とレベルの高さも実感している。今季は2軍スタートとなるが「まずは1軍昇格」を目標に掲げる。「これまでやってきたことを出せば結果はついてくると思います」。自慢の直球とスプリットを軸にアピールしていく。
将来的な目標は台湾球界を経由してのNPB入り。しかし何よりも優先するのはチームへの貢献だ。「ENEOSの時から、その気持ちは変わっていないです」。初めての海外生活、過酷な夏の暑さなど不安要素もあるが、それもすべて覚悟の上だ。
反対していた母親も、今では「パスポート取らなきゃ」と応援する側に回った。異国の地で始まった左腕の挑戦。その一球一球が、夢への道を切り開いていく。
(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)