まさかの“打ち止め”に敵将激怒 降板指令でヘソ曲げた左腕に幸運…雨が呼んだレアな結末

元西武の杉本氏、1年目からフル回転「すごい使われ方」
元西武左腕の杉本正氏(野球評論家)は、プロ1年目の1981年、先発、中継ぎ、ワンポイントリリーフに、抑えもこなした。無我夢中で必死に投げ続け、36登板で7勝8敗2セーブ、防御率3.48の成績を残した。このフル回転のルーキーイヤーでは、いろんなことも経験。夏場の南海戦では、不本意な形で西武・根本陸夫監督から交代を告げられて、ふてくされていたら、思わぬ結果が待っていたという。
プロ1年目の杉本氏は、4月7日の日本ハム戦(後楽園)に初登板、初先発で4安打完封勝利。社会人野球・大昭和製紙(富士市)からドラフト3位で入団した左腕は見事な投球でデビュー戦を飾ったが、それで先発ローテーションに入ったわけではなかった。2登板目は4月12日の近鉄戦(西武)で負け展開の7回途中に左のスラッガー・栗橋茂外野手へのワンポイントリリーフで起用され、1/3を無失点だった。
3登板目の4月21日の南海戦(大阪)に先発して4安打2失点(自責0)完投で2勝目を挙げても、4登板目は中1日で23日の同カードにリリーフで起用され、2/3を投げて無失点。5登板目の28日の日本ハム戦(西武)に先発し、3回途中5失点で初めてKOされると、また中1日で、30日の日本ハム戦にワンポイントリリーフ(1/3を無失点)と、休む間もないくらいにマウンドに上がった。
「今、考えれば、すごい使われ方だったんだなって思いますけどね」と杉本氏は苦笑したが、ハードな出番はまだまだ続いた。5月20日と21日の阪急戦(西武)に2試合連続リリーフ(1/3無失点と2/3無失点)すると、24日の近鉄戦(秋田)に先発して5回3失点で4勝目。さらに29日の日本ハム戦(後楽園)では9回に登板して1回無失点でプロ初セーブをマークすると、翌30日の同カードに連投で先発した(4回1/3、2失点で降板)。
7月には中2日先発で1失点完投勝利→中2日リリーフで2回2/3無失点セーブ→中1日リリーフで1回無失点→中3日先発で3失点完投負けとすさまじいペースでの登板もあったし、延長11回3失点完投で7勝目を挙げた9月23日の阪急戦(西武)は、21日と22日のリリーフ登板に続く3連投目での結果だった。「最後の7勝目はデーゲームだった。(延長11回に)立花(義家)さんの犠牲フライでサヨナラでしたね。まぁ、社会人時代も連投していたんで、投げることに関してはあまり抵抗なかったんでしょうね」
145回1/3を投げた1年目だが、フル回転で様々なケースでの登板を経験した。そんななか南海・門田博光外野手との対決が思い出深いという。門田氏は7月31日に当時の新記録となる月間16本塁打を達成したが、それを打たれたのが杉本氏だった。「満塁ホームラン。カーブを打たれました。のちに僕はダイエーで門田さんと一緒にやっているんですけど、その時に『あの年の7月は連続試合本塁打を杉本君に止められて、最後の最後に打てたんだよ』って、そんな話もしてもらったんです」。
1981年の門田は、7月に入って5試合連続本塁打をマークしたが、7月8日の西武戦(西武)では無安打。その時の西武先発が、1失点完投勝利で4勝目を挙げた杉本氏だった。6試合連続本塁打を阻まれた門田氏だが、翌9日からまた5試合連続本塁打を放つなど量産ペースを落とさず、7月ラストの試合で因縁の杉本氏に満塁弾でお返しして、記録を成し遂げたわけだ。
無念の交代も、降雨コールドで巡ってきた6勝目
プロ1年目から球界を代表するスラッガーとの対戦は、杉本氏にとって貴重な財産となった。そんな左腕が「珍しい経験もしました」と振り返ったのが、8月22日の南海戦(上越市高田公園野球場)での出来事だ。「先発して(5-0で)勝っている試合で、5回裏に1死満塁にすると、松沼の弟さん(松沼雅之投手)に代えられたんです」
ピンチを招いたとはいえ、4回1/3での非情交代。「僕はもう勝ち投手の権利がないので、ふてくされていたんですよ。そしたら(松沼雅が)満塁ホームランを打たれて1点差になった。で、6回表の西武の攻撃の時に雨がワーって降ってきて(6回表終了時に)ストップがかかり降雨コールド。(南海のドン・)ブレイザー監督は怒って、雨が降っている中、バケツで水をまいていましたけどね。『ふざけるな!』って感じで」。
この後にうれしい結果が伝えられた。「試合が終わって、アナウンスで勝ち投手・杉本って言われたんです。(松沼)弟さんがセーブでね。えっ、て思ったら、このケース(勝利チームの守備が6回未満のコールドゲーム)の場合、先発投手は4回を投げきれば勝利投手の権利を得られるってことだった。非常にレアな勝ち方をしたんです」。悔しい交代が一転して、白星(6勝目)を手にする試合になったのだ。
初登板初完封勝利の鮮烈デビューを飾っただけでなく、杉本氏は1年目から多くの出来事に遭遇した。この年限りで退任した根本監督に鍛えられ、それこそハードな起用なども乗り越えた。2年目シーズンからは、管理野球で知られる広岡達朗監督の下でプレー。次は優勝も経験することになる。
(山口真司 / Shinji Yamaguchi)