なぜ大谷翔平は全力疾走しないのか? MLBワースト6位&まだ盗塁ゼロも…コーチが証言「ショウヘイも賢く判断」

開幕10試合で盗塁ゼロの大谷翔平【写真:黒澤崇】開幕10試合で盗塁ゼロの大谷翔平【写真:黒澤崇】

開幕10試合で盗塁ゼロはドジャース移籍3年目で初めて

 ドジャース・大谷翔平投手に“異変”が起きている。開幕10試合で盗塁ゼロは、移籍3年目で初めて。MLB公式サイトのデータサイト「Baseball Savant(ベースボール・サバント)」によると、1秒あたりに移動する距離で計測される「スプリントスピード」24.3フィート(約7.4メートル)は、メジャー全体でワースト6位となっている。何が起こっているのか。

 2024年に59盗塁を決めるなど足も武器だった大谷にとって、明らかな変化だ。平凡な内野ゴロでは一塁へ全力疾走せず。5日(日本時間6日)の敵地・ナショナルズ戦もそうだ。5回に放った右翼線への打球は本来なら三塁打コースだったが、無理せずに二塁ベースでストップ。クリス・ウッドワード一塁コーチが明かす。

「走り出した瞬間は『三塁まで行ける』と思ったが、ボールがフェンスに跳ね返って野手の正面に行った。結果的には二塁止まりで正解だったと思う」

 昨季は、2年ぶりに投手復帰する6月15日までの70試合で11盗塁。投手復帰した6月16日以降は88試合で9盗塁とペースが落ちた。リハビリが本格化した5月21日から1か月以上、37試合で盗塁ゼロだった時期もあった。

 ウッドワード一塁コーチは、こう続ける。

「体への負担を管理していたんだ。ショウヘイも非常に賢く判断していた。私がストップをかける必要があるかと思っていたが、彼自身が状況をよく理解していた。相手投手のクイックが遅く、走れるタイミングでもいかないことがあったが、彼は『点差もあったし、無理をする場面ではなかった』と判断していた。その代わり必要な時にはいつでも走ってくれた」

全力疾走は父・徹さんから教え込まれた“大谷のアイデンティティ”

 決して走れなくなったわけではない。そして、全力疾走は少年時代、父・徹さんから教え込まれた、いわば大谷のアイデンティティと言える。なぜ走らなくなったのか。やはり先発投手、二刀流への思いからだ。

「走塁に対する考え方やアプローチが変わったとは思わない。当然ながら、今季は最初からフルで登板している。だから、私たちは彼の状態に細心の注意を払い、ケアしていく必要がある。彼の足を守り、何も起きないようにしなければならない」

「リスクをおかすようなことはしない。例えば9回にどうしても盗塁が必要な場面であれば彼は走るだろう。でも、特に登板日やその前後は、足を酷使してリスクをおかしたくない。チームにとって非常に重要であり、健康を維持することが最優先になる」

 ウッドワード一塁コーチは2025年キャンプ中にシーズン盗塁数について「20、30盗塁くらいかな」と予想。大谷は3年連続でシーズン20盗塁をマークし、予想を的中させた。あくまで体への負担を考慮した上での盗塁になる。

フィリーズ戦で盗塁する大谷(2025年)【写真:荒川祐史】フィリーズ戦で盗塁する大谷(2025年)【写真:荒川祐史】

「今年も20盗塁が妥当な数字だと思う。状況次第ではもう少し増えるかもしれないが、やはり20盗塁前後でしょう。その気になれば50盗塁だって可能だけど、出塁するたびに走らせることはしない。足への負担が大きすぎるから」

 メジャーはレギュラーシーズンだけで162試合の長丁場。そしてドジャースにとっては、何よりポストシーズンの10月が“シーズン本番”となる。

「それが全て。ショウヘイには健康な状態でワールドシリーズを戦ってもらわないといけない。彼自身は素晴らしい数字を残したい、MVPを獲りたい、サイ・ヤング賞を獲りたい。そういう意欲はあるだろう。もし投手として多く投げるのであれば、走塁に関してはより慎重にならないといけない。投球は体に大きな負担がかかるからね。休養、睡眠、食事。その全てが彼が健康で居続けるためには非常に重要だ」

 ただ、闇雲に走らない。ワールドシリーズ3連覇まで勝ち上がるには、シーズンを見据えたコンディション管理が重要な要素となる。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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