超強豪校の甲子園右腕を「知らなくて」 東大の2年生4番が放つ異彩「受験期でしたし」

東大・福井克徳【写真:加治屋友輝】
東大・福井克徳【写真:加治屋友輝】

「投手としてはまだ神宮で通用する投球できない」でもフルスイング魅力

 東京六大学野球の春季リーグが11日に開幕した。連盟結成101年目を迎えた東京六大学に今季、ついにDH(指名打者)制が導入され注目されているが、早速、東大にユニークな指名打者が登場。東大合格者ランキング全国トップの常連として知られる東京・開成高出身の福井克徳投手(2年)だ。

 11日の明大1回戦で、スタメン「6番・指名打者」としてリーグ戦デビュー。登録は「投手」だが、まず打者として出場機会をつかんだ。

 東大・大久保裕監督は福井について「投手としてはまだ球が速くなくて、神宮で通用するピッチングはできないと思う。走ったり、守ったりすることも得意ではない。ただ、バッティングは思い切りよくフルスイングできるところが特長で、オープン戦でヒットが出ていた。当分はそちらで使っていきたいと思います」と説明する。DH制導入の恩恵を受けた選手と言えるだろう。

 172センチ、83キロのがっちりとした体形。左打席に入ると、バットを肩に乗せるようにして構え、狭いスタンスで膝を曲げず、すっと立つ。かかとを少し浮かせてタイミングを取り、手元までボールを引きつけてフルスイング。どちらかというと、メジャーリーグでよく見る打撃フォームだ。福井自身は「誰かを参考にはしていません。自分が気持ちいい打ち方をしています」という。

 第1打席は二ゴロ。5回先頭での第2打席は逆方向となる左前へ打ち返し、リーグ戦初安打を記録し、代走を送られてベンチへ退いた。

 そして翌12日の明大2回戦ではなんと、「4番・指名打者」に抜擢された。ところが本人の反応は「(大久保監督は打順を)すごく入れ替えるなあ、と思いました」とまるで他人事のようにクール。勝手に「まさか4番とは思っていなかったので、震えるくらい緊張しました」という風な反応を想像していた記者は、少し拍子抜けしてしまった。福井は「もちろん緊張することはありますが、打順とかではないです」と言い切った。

東大・福井克徳【写真:加治屋友輝】
東大・福井克徳【写真:加治屋友輝】

「だって僕、受験期でしたし…」高3の夏は東東京大会初戦敗退

 くしくも相手の明大の先発は、同学年の平嶋桂知(かいち)投手(2年)だった。高3だった一昨年、名門・大阪桐蔭高のエースとして春夏連続で甲子園出場。当時から最速154キロ右腕として、同世代では抜群の知名度を誇っていたのだが、福井は「知らなくて、今朝に『同学年だな』と……。平嶋くんは高3の時、投げていたのですか?」とピンときていなかった。

「だって僕、受験期でしたし……」。福井は開成高3年の夏、東東京大会初戦の2回戦で駿台学園高に0-7で7回コールド負けを喫した。自身は「2番・一塁」で出場し3打数1安打。投手としても4回からマウンドに上がり、3イニングを1安打無失点に抑えた記録が残っている。そこから東大に現役合格するくらい勉強したのだから、確かに、甲子園大会を見ている場合ではなかったかもしれない。

 そんな風に対照的な高校生活を送った2人が、リーグ戦の舞台で真っ向勝負するところも、東大が東京六大学に所属しているからこその面白さだろう。

 福井は2回の第1打席で、平嶋に外角低めのスプリットを振らされ三振。4回の第2打席は痛烈な打球を放ったが、野手の正面を突き遊直に倒れた。7回の第3打席は2番手の左腕・栗原英豊投手(4年)に空振り三振を喫し、3打数無安打2三振に終わった。

 平嶋との対戦を「僕の感覚では、そんなに遠くにいる感じはなかったですが、その差がどれくらいなのかはわかりません」と振り返った福井。照準を次週の18日から始まる早大戦に切り替え「相手の投手を研究して準備したいです」と語った。

 もともと開幕前から、東京六大学の監督で最もDH制導入に前向きで、「使えるものは何でも利用したい。他大学より少しレベルは落ちるかもしれないが、打つだけならという選手を使えるチャンス」と力を込めていたのが東大の大久保監督だった。貫禄を漂わせる福井の姿に、「ランナーがいる場面でやってくれそうなバッターですね」と目を細めた。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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