異例のデビュー2戦目の1年生に申告敬遠「持っている」 敵将が警戒した“3月の記憶”

「1番・中堅」抜擢、2戦目の第2打席で中前へリーグ戦初安打をマーク
スター候補はオーラが違う。東京六大学野球春季リーグは19日、早大の注目ルーキー・阿部葉太外野手(1年、横浜高)が東大2回戦でリーグ戦初安打を記録した。デビューしたばかりにも関わらず、勝敗を分ける場面で申告敬遠されるシーンもあった。
前日(18日)の今季初戦で、いきなりスタメン(1番・中堅)に抜擢されるも、3打数無安打1四球1犠打だった。この日も同じポジションで起用され、3回1死走者なしで迎えた第2打席で、東大先発の右腕・池田剛志投手(2年)の変化球が真ん中に来たところを逃さずピッチャー返し。球足の速いゴロがセンター前に達し、リーグ戦初安打をマークした。
初安打以上に印象的だったのが、最後の第5打席だ。2-2の同点で迎えた9回、2死二、三塁という試合を決めるチャンスで打席に向かったが、“敵将”の東大・大久保裕監督は申告敬遠を選択した。
大久保監督は「(阿部は)実力の持ち主で、ああいう場面では多分強い。持ってますよ。できることなら勝負を避けた方がいいかなと思いました。あそこは1点勝負で、2点取られるも(次の打者に打たれて)3点取られるも一緒ですから」と説明した。
さらに「東大グラウンドで大きいホームランを打たれていますから……」と付け加えた。阿部は横浜高時代の昨年3月7日、都内の東大グラウンドで行われた東大との練習試合に出場し、エースの松本慎之介投手(3年)から中越え三塁打と右越え3ランを放っていた。
ヒーローになり損ねた阿部は「いいイメージができていたのですが、しょうがないです」と苦笑。「(申告敬遠は)一塁が空いていたので、頭の片隅にはありました。前の打者が四球でつないでくれたら(勝負してもらえる)と思っていたのですが、いい当たりのファーストライナーだったので、敬遠もあるかなと思いました」と冷静に展開を読んでいた。結局試合は9回引き分けで終了。東大の満塁策が功を奏した形となった。

2月に左のふくらはぎと太もも裏を肉離れ「全治8週間の大怪我」
早大・小宮山悟監督は、阿部の4打数1安打1四球の結果に「それをよしとするのかどうか。こちらの期待からすれば、『1本しか打てなかった』という扱いです」と厳しい見方を示す。
指揮官は年明け早々から「1番・中堅」抜擢の意向を明かしていたが、阿部は2月のチーム合流後、左のふくらはぎと太もも裏を肉離れし、大幅にペースダウンを余儀なくされていたという。
小宮山監督は「打撃でちょっと差し込まれているのは、開幕前に実戦の打席数が少な過ぎたからしょうがない。全治8週間の大怪我を負い、急にワンランクレベルが上がった大学生の試合で、そんな簡単に打てるわけがない。想定内ではあります」と評した。
走攻守で魅力を秘める右投左打のオールラウンダー。主将として横浜高を春の選抜で全国制覇、夏の甲子園で8強入りに導いた阿部の本領が発揮されるのは、まだまだこれからだ。阿部自身も「全然、まだまだという思いです。絶対勝たないといけない試合で引き分けになってしまいましたが、自分が機能すれば変わってくると思います。早く打撃でチームの戦力になれるようにやっていきたいです」と活躍を誓った。
まだ課題はあるが、デビュー2戦目にして、大事な場面で敬遠四球をゲットしただけでも、やはり尋常ではないと見るべきだろう。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)