アマ球界にもヘルメット着用の動き 審判員が抱く“危機感”…NPBの事故は「他人事じゃない」

JABA京都大会では球審の頭部を守る防具を試験的に導入
グラウンドに立つ全ての人が、安全に役割を全うできるように。21日に開幕した「第76回わかさ生活JABA京都大会」で24日、球審の頭部を衝撃から守る防具の着用が試験的に始まった。JABA近畿地区連盟の更紗忠海常任理事は、大会途中で始めた理由を「安全対策を第一次項とし、大会初日に審判長と話して取り入れましょうと決めました。条件を満たしたヘルメットとマスクが確保できたのが昨日でした」と説明した。
導入を検討したきっかけは、16日に神宮球場で行われたヤクルト-DeNAの試合中のアクシデントだ。打者がスイングした際、手を離れたバットが、球審を務めていた川上拓斗審判員の左側頭部に直撃。川上審判員はすぐに搬送され、緊急手術を受けた。18日にはNPBから、全試合で球審はヘルメットを着用するよう通達がなされた。
「NPBであったことは他人事じゃない」と危機感を露わにしたのは、24日、第2試合で球審を務めた審判歴30年を超える姫田真吾審判員。2021年7月、社会人野球でも痛ましい事故が発生した。ほっともっとフィールドで行われた全日本選手権大会で、球審の土井淳宏審判員(現JABA大阪府野球連盟審判長)の左側頭部に、折れたバットのヘッドが当たり、裂傷を負った。土井審判員は、緊急搬送先で4針を縫う処置を受けた。
姫田審判員は「球審のマスクに、打者の手から離れたバットのエンドグリップが刺さったのを見たこともある」と語るなど、ヒヤリとした場面を経験してきた。この日は、大会本部が用意した、財団法人製品安全協会の厳しい安全基準をクリアした「SGマーク」付きの帽子型ヘルメットを着用。その上から自前のマスクを被った。しかし、試合開始から間もなく、自らの判断でヘルメットを審判室へ戻した。

2010年にランナーコーチのヘルメット着用が義務化、審判に潜む事故リスク
「最初は違和感がなかったので被っていましたが、だんだんズレてきたんです。マスクのゴム部分を『ハーネス』と言うんですが、その長さをこれまで被っていた帽子に合わせていることが原因だと思います。(頭の周囲の)大きさが違いますから。調整できますが、少し時間がかかるんですよ。公式戦の試合中に、そんな時間をとらせられないでしょう。このまま被っていては判定に影響が出ると思ったので、途中から帽子に変えました」と、姫田審判員は変更した理由を明かした。
審判室には、捕手用のフルフェイスマスクも用意されていた。ヘルメットとマスクが一体になっているためハーネスの調整が不要だが、アマチュア審判員にとっては「頸椎を痛める可能性がある」(更紗常務理事)ほど重く、どの審判員も「1試合を通して着用することはできない」との見解を示した。1つが5、6万円という金額も二の足を踏ませる。
この日は3試合が行われたが最後までヘルメットを着用した球審はいなかった。しかし、どの審判員も身を守ることへの意識は高い。姫田審判員は「連盟から帽子型のヘルメットは1万円前後と聞いたんでね。NPBであったことは他人事じゃないですから。僕も頭ではないけど、打者のスイングしたバットが腕に当たったことがあります。球審は、常に危険と隣り合わせにあるということを改めて認識しているところです」と語った。
選手に比べて、遅れているように見える審判員の安全確保。左側頭部に裂傷を負った土井審判員は、眉をさげて笑いながら、うっすらと残る傷跡を指差した。「NPBで起きたことを発端に全国へ広がり、球審もヘルメットを被ることが当たり前になるはずです。打席からあれだけ離れた場所にいるランナーコーチも、危ないからとヘルメットが義務化(2010年)されているんですから」。選手にある事故リスクは、すぐそばに立つ審判員にもある。
(喜岡桜 / Sakura Kioka)