キャリアワースト級の不振だった昨季から復活
期待外れの1年は過去の話。ドジャースのタナー・スコット投手が本来の姿を取り戻している。昨オフに4年7200万ドル(約114億円)の大型契約で加入するも、昨季はメジャー最悪の10度のセーブ失敗。61登板で防御率4.74とキャリアワースト級の不振だった。しかし、移籍2年目の今季はここまで圧倒的な投球を続けている。本人とコーチへの独占インタビューで、復調の鍵に迫った。
「昨年の自分は酷かった。単純明快に最悪だったんです」
言葉を濁すつもりはない。スコットは真っ直ぐに、受け入れがたい事実と向き合った。
ドジャース1年目の昨季、球界屈指のリリーフ左腕は痛打を浴びまくった。守護神として、9回のマウンドに上がるもリードを守り切れず。度重なるセーブ失敗で、クローザーの座を剥奪された。
「もちろん落胆しました。新しいチームに来て、自分自身への期待、チームからの期待に応えたかった。それなのに、自分はただただ最悪でした」
7月末から約1か月間、左肘の炎症で離脱。プレーオフも感染症の影響でロースター外となった。4年7200万ドルの大型契約ということもあり、ファンの不満は溜まり、心無い言葉もSNS上に飛び交った。
「もう終わったことです。ワールドシリーズで優勝できましたし、それで良しとします」
過去を水に流すためにも、31歳のベテランは不甲斐ない自分を凝視した。
発覚した悪癖「踏み込みがかなり開いていた」
「昨年はたくさんの間違った動きをしてしまっていました。そのせいで、真ん中に甘く入ってしまうことが増えていました。2ストライクから、打てる球を投げてしまっていた。それはこのレベルの野球でやってはいけないこと。全ては投球動作から始まります。悪い癖がついてしまっていたので、それを取り除く必要がありました」
メジャー屈指のセットアッパーとして君臨した2023、2024年と何が違うのか。マーク・プライアー投手コーチ、コナー・マクギネス投手コーチ補佐とともに何度も何度も映像を見返した。発覚した原因の1つは、踏み込む右足のズレだった。マクギネスコーチはこう説明する。
「これまでと比べて、昨年は、踏み込み足がかなり開いて着地していました。彼は低いリリースポイントからの、ホップしてカットするような速球に定評がありますが、昨年は打者から早めに見えてしまっていました。そのため、ホップしながらカットするように見える球のインパクトが薄れてしまっていたのです」
原因が分かったからといって、すぐに解決できるわけではない。一度ついた悪癖を修正するためには、地道な練習を繰り返さなくてはならない。今オフの取り組みを見てきたマクギネスコーチは「彼自身が多くの努力をしたことを称えるべきです」と強調する。
今季はキャリアハイペースの与四球率も「全く考えていない」
「昨年は多くの怪我と戦い、厳しい1年だったと思います。新しい環境、新しい期待、そして彼自身も気づいていなかったであろう怪我と戦っていました。彼は健康なオフシーズンを過ごして戻ってきて、何をすべきか分かっていた。今季はここまで素晴らしい活躍をしてくれています。彼がいてくれて、本当に嬉しいですよ」
今季は5月29日(日本時間30日)時点で、25試合に登板し、防御率1.14。23回2/3を投げて28奪三振、被打率はわずか.136と支配的な投球を続けている。与四球率(BB/9)は1.14。これは2023年(2.77)、2024年(4.50)よりも遥かに良く、キャリアハイを記録するペースだ。
「それについては全く考えていません。ただアウトを取ろうとしているだけです。誰も塁に出したくないので、四球を与えないのが理想ですが、出してしまうこともあります。そこから切り抜けないといけません。同じマインドセットで、ただマウンドに上がって攻めるだけです」
目を背けたくなる現実を逃げずに受け止めた。だからこそ、最悪の1年を過去のものにできた。名誉挽回のシーズン。左腕が見ているのは前だけだ。
(鉾久真大 / Masahiro Muku)