「プロの投手かと」敵将脱帽の15K ドラフト上位候補に急浮上…慶大左腕を支える“引き出し”

渡辺和大に敵将が脱帽「プロのピッチャーかなと思いました」
左腕の急成長はどこまで続くのか。今秋のドラフト上位候補にあがる慶大・渡辺和大投手(4年)は13日、神宮球場で行われた第75回全日本大学野球選手権記念大会・準決勝の東北福祉大戦に先発。8回途中に降板したが、大会タイ記録の8者連続を含む15三振を奪い、3安打1失点(自責点0)の快投を演じた。
プロ注目の強打者がズラリと並ぶ東北福祉大打線にも、付け入る隙を与えなかった。バットは次々と空を切った。東北福祉大の山路哲生監督は「もう、プロのピッチャーかなと思いました。凄いピッチャーだなと……。低めのボールの切れが素晴らしくて、こちらの打者は真っすぐとスライダー(渡辺和に言わせればカットボール)の見分けがつかず、その球を空振りしていました」と脱帽するしかなかった。
球種は140キロ台中盤のストレート(自己最速は151キロ)、130キロ前後のカットボール、ツーシームの3種類で大半を占める。山路監督が指摘した通り、この日はストレートと同じ軌道で来て、打者の手元で鋭く曲がるカットボールが効果的で、15奪三振中12個の決め球がカットボールだった。
渡辺和は「僕のカットボールは、曲げようとすると良さがなくなる。握りも投げるイメージも真っすぐと同じで、リリースの瞬間の手の角度だけを変えています」と説明する。そのカットボールと同じ球速帯で大きく落ちるツーシームも、配球の中で絶妙のアクセントとなっている。
昨年は春、秋ともリーグ戦の防御率が4点台で、プロが注目するような存在ではなかった。ところが、今春のリーグ戦で9試合7勝2敗、防御率1.28で最優秀防御率のタイトルを獲得する飛躍ぶり。今大会に入り、さらに凄みを増している。
「経験積ませてもらったことが一番」早慶戦3試合で3連投
成長を遂げた第1の要因は、今年から就任した上田誠投手コーチ(神奈川・慶応高前監督)の存在だ。体が突っ込みがちだった投球フォームの修正、ツーシームの大幅なモデルチェンジなどに尽力。渡辺和は「本当に引き出しの多い指導者で、お陰で今の僕があると思っています。いい出会いだったと思います」と感謝しきりだ。
続けて「最近思うのは、(2年生の春から)ずっと先発をやらせてもらってきて、プレッシャーがかかる場面での1球とか、数多く経験を積ませてもらったことが一番大きいということです」と付け加えた。チームの優勝が懸かった今春リーグ戦最終週の早大戦3試合に3連投し、大車輪の働きで天皇杯奪回に貢献したことで、またワンランク、投手としてのレベルを上げた感がある。
プロのスカウト陣の評価もうなぎ上り。同じ東京六大学で活躍した左腕で、昨年のドラフト2位でロッテ入りし、プロ1年目から開幕投手を務めた明大出身・毛利海大投手と比較してみる。
毛利は4年生だった昨春のリーグ戦、9試合で6勝0敗、防御率1.34をマークし最優秀防御率に輝いた。9試合で7勝2敗、防御率1.28で同じくタイトルを獲得した今春の渡辺和とほぼ互角。ただ、渡辺和が残した数字で、特筆すべきは“奪三振力”だ。56回1/3を投げて65三振、奪三振率(9イニングあたりの奪三振数)は10.45。昨春の毛利は53回2/3を投げて54奪三振、奪三振率9.06と水をあけている。
渡辺和は「今日は15三振も取ったせいで、少し球数が多くなってバテちゃった」とおどけながら、7回1/3、107球での降板を悔やむ。「理想はチームとしても僕としても、初球を引っ掛けさせてセカンドゴロとか、詰まらせてレフトフライとか、少ない球数で打ち取ること。それを狙いながら投げています」と語った。
慶大は渡辺和の力投もあり、東北福祉大を5-2で敗り、14日の関大との決勝に駒を進めた。急成長に周囲が目を見張るエースは「日本一は、実力だけでなく、いい仲間、いいチームに恵まれ、全部が合わないと取れないと思っています。今年は絶対にそれができている。全身全霊を尽くして頑張ります」と力を込めた。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)