「私も楽しみだった」 2連覇逃した尽誠学園…監督が涙の背番号「11」と過ごした朝8時からの日課

準決勝・英明戦に先発した尽誠学園・福井理希【写真:喜岡桜】
準決勝・英明戦に先発した尽誠学園・福井理希【写真:喜岡桜】

延長10回に力尽きる…尽誠学園は夏2連覇ならず

 第108回全国高校野球選手権香川大会の準決勝23日、レクザムスタジアムで行われ、前年王者の尽誠学園が延長10回タイブレークの末に10-4で英明に敗れた。先発を任された福井理希投手(3年)は9回まで4失点の粘投も、10回に相手打線につかまり1死も奪えず降板。試合後には「抽選会からずっと、英明との試合に向かってきました。最初に3点とってくれたのに。なにやっているんだろう」と悔やんだ。

 昨秋はエースナンバーを付けるも、春はベンチ外に。最後の夏に向けて自分を見つめ直し、掴んだ背番号「11」だった。初回、福井が英明打線を3人で抑えると、直後に6番・大塚龍二(2年)の中越え二塁打で一気に3点を先制。その後も、福井の粘りの投球もあって試合を優位に進めた。

 勝ちが目前となり、4-2で迎えた9回に魔物が待っていた。先頭から3者連続で出塁を許すと、5番・松本一心(3年)の内野ゴロの間に1点を許すと、続く6番・浜野銀次郎(3年)の中前打で同点に追いつかれた。あとアウト3つで勝利が手からこぼれ落ちた尽誠学園は、延長10回に一挙6点を失い、夏の戦いが終わった。

 西村太監督は試合後、福井について「彼が(この夏に向けて)一番成長してくれましたよね」と語った。新チームのエースとして秋季大会で背番号「1」を託すも、まだ精神的な未熟さがあったという。もう1段階上の選手になってもらうために、指揮官は今年3月の春季大会では一転、背番号を渡さなかった。

尽誠学園は夏の連覇を狙うも準決勝で夢がついえた【写真:喜岡桜】
尽誠学園は夏の連覇を狙うも準決勝で夢がついえた【写真:喜岡桜】

1人の高校生として…監督と一緒に見つめ直した日々の生活

 福井は、その悔しさから自分の至らなさを真剣に見つめ直した。68人の部員の中で一番に早起きし、グラウンド周辺を1人でランニングをするようになった。寮で部員たちと暮らす老犬・コタロウの面倒を率先して行う「コタロウ係」として、朝の散歩、コタロウが日中を過ごすグラウンド脇の定位置への移動などの世話も、今までより心を込めてするようになった。

 さらには、毎朝8時過ぎから校舎横にある自転車置き場に立ち、通学生がきれいに停めやすいように整理整頓も西村監督と一緒に行った。「どうしたらきれいに停められるかを、だいたいの人は自転車の左側に立つから『自転車置き場の右側から詰めた方がいいんじゃない?』と一緒に考えながら。そんな話をできるのが私も楽しみだったんです」と指揮官は振り返る。

 グラウンド外での取り組みを通して、福井は「心のコントロールをして、ボールのコントロールもできるようになったんです」とうなずく。この日、尽誠学園のスタンドは全校生徒が声をはりあげていた。その中には、昨秋の県大会でもフェンス越しに応援してくれた昨年のエース・廣瀬賢太(大商大1年)の姿もあった。

 大汗をかきながら歯を食いしばり、最後まで投げ切ろうとしたが無念の途中降板。準決勝敗退に涙を拭ったが、この夏のために取り組んだことは、これからの人生において決して無駄にならない。大学でも野球を続けるつもりだ。

「最後はああなっちゃいましたが、それも(福井投手なら)仕方ない。やり切ってくれました」と労った西村監督は、これからも自転車置き場で、1人の高校生としての成長を感じられることを期待していた。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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