高校通算0本も…最後の夏に放った劇的3ラン 4番が振り払った“重圧”、父も立った甲子園へ

専大松戸の9回に決勝3ランを放った拓大紅陵・片岡拓月【写真:岡部直樹】
専大松戸の9回に決勝3ランを放った拓大紅陵・片岡拓月【写真:岡部直樹】

仲間の思いを背負った9回の打席

 第108回全国高校野球選手権千葉大会は26日、ZOZOマリンスタジアムで決勝戦が行われ、拓大紅陵が専大松戸に3-1で逆転勝利を収め、2002年以来24年ぶり6度目の夏の甲子園出場を決めた。高校通算本塁打は0本。4番・片岡拓月捕手(3年)が、最後の夏に放った初本塁打が、チームを甲子園へ導く劇的な逆転3ランとなった。

 拓大紅陵は初回に犠飛で先制を許すと、専大松戸のエース右腕・門倉を打ち崩せずに最終9回に突入した。先頭から2者連続の安打で好機を広げ、4番に打席が回ってきた。カウント1-0からの2球目だった。甘く内側に入った一球を強振。打球は低い弾道で左翼スタンドに吸い込まれ、逆転3ランとなった。場内は一気に熱狂に包まれた。

 6回には門倉のスライダーに空振り三振を喫していた。それまでチャンスで結果を残せず、「4番の仕事を全然果たせていなかった」と感じていたからこそ、最後の打席には「一振りで決めてやろうっていう気持ち」で立った。決勝の大舞台で、これまで味わってきた悔しさを一振りに込めた。

 9回に打席を迎えられたのは、仲間が繋いできたからだった。打席に入る前には「お前、気持ちで行けよ」と声をかけられた。「チームのみんなが4番である自分に、いい形で繋いでくれた。自分じゃなくて全員で打ったホームランかなと思います」。4番としての責任を感じていたからこそ、最後に仲間の思いに応えた一打だった。

 チームの一体感を生み出していたのが、普段からチーム全体に目を配る姿勢だった。毎試合、バスを降りる際には選手一人ひとりに声をかけ、レギュラーだけでなく全部員とタッチを交わす。坂巻展行監督は「すごく周りに気を配れる、引っ張っていける」と評した。

 主将の加治征樹内野手(3年)も「周りの人から好かれるような人で、気さくで、面白くて、優しくて」と話しながら、野球になると「本当に目の色を変えてとことん練習するので、頼っています」と信頼を寄せる。普段はムードメーカーでも、グラウンドでは仲間から頼られる副主将だった。

専大松戸の9回に決勝3ランを放った拓大紅陵・片岡拓月【写真:岡部直樹】
専大松戸の9回に決勝3ランを放った拓大紅陵・片岡拓月【写真:岡部直樹】

父が立った甲子園へ…24年越しの恩返し

 幼い頃から追い続けてきた背中がある。父も24年前、拓大紅陵の4番として甲子園に出場している。「幼少期からお父さんの背中を追って野球をやってきたので、お父さん以来の甲子園っていうのは、最高の恩返しになったかなと思います」。家に帰ってから一緒に練習し、食卓でも野球の話をした。試合の反省や打撃について指導を受け、時には厳しい言葉を浴びた。「試合で打てなかった時とかにボロクソに言われて。メンタルも危なかった時もあるんですけど、その経験があって甲子園に行けたので、感謝しかないです」と語った。

 決勝戦の前に父からかけられた言葉は、「全力でやってこい、全力で楽しんでこい」だった。「普段厳しいこと言われていると、試合前の『楽しくやってこい』っていう言葉がすごい励みになります」。父が立った24年前の甲子園に、今度は自分が立つ。それでも、目指す場所はさらに先にある。「甲子園でまた活躍して、次はお父さんを超える存在になりたいと思います」。

 高校通算0本塁打だった4番が、最後の夏に放った一発で拓大紅陵を24年ぶりの甲子園へ導いた。父がかつて立った聖地へ、今度は息子が向かう。

(岡部直樹 / Naoki Okabe)

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