全国Vも「それほど強くなかった」 名門・神戸弘陵が味わったどん底…「叱咤ばかり」が報われた日

全国高等学校女子硬式野球選手権大会で優勝した神戸弘陵ナイン【写真:喜岡桜】
全国高等学校女子硬式野球選手権大会で優勝した神戸弘陵ナイン【写真:喜岡桜】

甲子園で行われた女子高校野球の決勝…神戸弘陵が2年ぶり5度目の夏制覇

 最大の敵は己の心にあり。男子球児たちによる全国大会開幕を控えた甲子園球場で1日、「第30回記念 全国高等学校女子硬式野球選手権大会」の決勝が行われ、春4強の神戸弘陵(兵庫)が10-0で学法石川(福島)を下し、2年ぶり5度目の夏の頂点に立った。春夏通算10度目の全国制覇の節目でもある。石原康司監督は「最後に良いものを見せてもらいました」と語り、球児93人との苦楽を噛み締めた。

 この1年は試行錯誤の連続だった。春の選抜、夏の選手権と並んで女子野球の「3大全国大会」に位置づけられ、新チームとして初めて臨んだ昨年8月のユース大会は初戦敗退。同校として全国大会では2016年春以来10年ぶりの屈辱だった。さらに今年3月、4連覇をかけた選抜大会は準決勝で敗退した。

 2025年の夏をただ1人ベンチメンバーとして経験していた福田稟内野手(3年)は、強豪ゆえに、勝ち続けなければならないプレッシャーが「あるにはある」と話す。だが、それを上回るほどの「日本一になるためにここ(神戸弘陵)に来た」という思いがある。選抜敗退後は、目標と現在地との差に「焦りが強くなりました。このままでは無冠で終わってしまう」と愕然としたという。

 全国にいる球児の大半はタイトルを掴むことができずに高校野球を終える。だが神戸弘陵の部員たちは、そうなることを自分の心が許さなかった。話し合いの場が何度も設けられた。福田は「負けた後は泣いてしまう子が多かったんですけど、夏の優勝に向けた話をしているので(その場の雰囲気が)明るくなっていきました」と振り返った。

 石原監督も新たな手を打っていた。「どうも野球を知らない子が多い。ただ打って投げているだけ。ルールのこと、いろんなことを知っているのかというと、知らないんです」。スキルアップ、人間力の向上だけでなく、野球に関する知識を深めることも勝利に繋がると考えた。的確な指導法を求め、名将や工夫をしている指導者の著書を買い漁った。

神戸弘陵・石原康司監督【写真:喜岡桜】
神戸弘陵・石原康司監督【写真:喜岡桜】

夏に負けると「後味が悪いんです」

「それをもとにして練習の一つ一つを紐解いて教えていきました」という指揮官。部員に対して口頭で説明するだけでなく、プリントに要点をまとめて配布した。同校を全国屈指の強豪へ育て上げた女子野球界の名将も、さまざまな書籍から学びを得ながら「変わる勇気を持たないといけない」と感じた1年だったという。

 輝かしい実績を誇るチームだからこそ、なにかが崩れたときのショックは大きい。また、なにかを変えることには勇気がいる。石原監督は、昨秋からここまでの道のりを振り返り、「叱咤激励という言葉がありますけども、叱咤ばかりをしてきました」と頭をかいた。だが、「ユース、選抜で優勝しても、やっぱり夏にポロッと負けると厄介で、後味が悪いんです。だから最後の夏にいい結果を残すというのが目標なんです」。

 決勝を戦っている最中は、一切声を荒げることはなかったが、ベンチから鋭い眼を送り続けた。そして、それぞれの想いが結実した甲子園でやっと、目尻を下げた指揮官。「それほど強くなかったチームが見事に達成してくれました」と、忘れかけていた“激励”の言葉を贈った。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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