緊急事態のド軍、敢行した補強は“人間関係も重視”? 戻らないスミス…GMが明かすロートベット獲得の裏側

ドジャースに復帰したベン・ロートベット【写真:黒澤崇】ドジャースに復帰したベン・ロートベット【写真:黒澤崇】

トレード期限間近に緊急事態…ドジャースが選んだ戦略

 3年連続世界一を狙うドジャースに、8月に入って珍しい事態が起こった。チームの正捕手であるウィル・スミス、2番手捕手のダルトン・ラッシングが故障に見舞われ、トレード期限で獲得した2人の捕手がアクティブロースターに入ったのだ。緊急事態とはいえ、獲得した元ドジャースの2人。フロントがスキのない動きを見せた。

 今季は不動の正捕手スミス、昨年デビューしてメジャーの水にも慣れつつあるラッシングの2人体制で盤石かと思われた。しかし6月にスミスが離脱。6月6日(日本時間7日)のエンゼルス戦でスタメンに名を連ねていたが、首の張りを訴えて先発メンバー外に。当初はチームに同行しながら調整を行っていたため軽症かと思われたが、負傷者リスト(IL)に入ってからなかなか戻ってこない。

 長年正捕手を担ってきたスミス。ロッカールームで着替える際には、いつも背骨に沿って赤黒い吸い球(カッピング)の跡が2列、びっしりとついている。打者としても中軸を担いながら扇の要を務める負担の大きさについては、説明するまでもないだろう。

 そして、ここに来てラッシングも右肘の炎症でILに。今季中の捕手復帰が厳しいと見られており、レギュラー捕手2人が消える事態になった。

 今夏のトレード市場にはアドリー・ラッチマン、ハンター・グッドマンら強打の捕手も注目されていたが、ドジャースが緊急事態を凌ぐために目をつけたのは“馴染みの”2人だった。

 ベン・ロートベット捕手は昨年のトレード期限間近に加入。同じくスミスが離脱していた際の穴埋め要員として昇格していた。守備面では好リードが目立ち、チームの世界一を語る上で欠かせない選手となった。

 また、ドジャースでは有望株として期待されていたハンター・フェドゥーシアも獲得。4日(同5日)には捕手を総入れ替えで2人をロースターにいれた。そんな芸当ができたのも、昨年までの実績があったからだ。

 ブランドン・ゴームズGMが、2人の獲得理由について説明した。

カブス戦に出場したドジャースのハンター・フェドゥーシア【写真:黒澤崇】カブス戦に出場したドジャースのハンター・フェドゥーシア【写真:黒澤崇】

 ロートベットとフェドゥーシアの獲得については「2人に関しては、うちの投手陣やコーチ陣とすでに面識、馴染みがある点が非常に重要だった。すぐにクラブハウスに馴染んで入れますし、うちの投手たちも過去に彼らに対して投げた経験があります。チームにとって本当にぴったりな補強だった」と語った。1、2か月ほど前から獲得の議論はあったものの、ラッシング離脱によって決まったという。

 試合前、他の選手らとアップをする2人の表情は柔らかかった。特にコミュニケーションが必要な捕手というポジションで元チームメートということは大きく、チームにはすんなり馴染んでいるように見えた。

 長年ドジャースを取材する「カリフォルニア・ポスト」のディラン・ヘルナンデス記者は、「ドジャースも前は数字だけで獲る選手を全部決めていたような球団だったが、最近は性格面や、人間関係の面も見始めるようになった」と説明する。今回の獲得はまさしく、後者を重視した動きだ。

重視した“チームへのフィット力”

 ロートベットには降格オプションがなく、昨年11月にはレッズがクレーム獲得。2月にドジャースが再獲得し、DFAとした際はメッツが獲得したため、マイナーには置いておけなかった。ドジャースにとっては“システムや投手陣を知り尽くした貴重な即戦力”として評価される一方で、メッツでは“3Aの捕手”という扱いに留まっていた。フェドゥーシアもレイズではプラトーン捕手、2番手捕手という立場だったこともあり、少ない対価でチームの内部に詳しい捕手を獲得できたのは大きい。

 ゴームズGMは「ラッシングとスミスが離脱する中で、捕手の層をしっかり補強して万全の陣容を整えることができた。これで8月、9月、そして10月のポストシーズンに向けて、素晴らしい選択肢と十分な層を持って挑むことができると思っている」と自信を覗かせた。

 スミス、ラッシングに比べて2人の打力が圧倒的に劣るのは確か。それでも緊急事態の中で、王者ドジャースが実績やデータ以上に重視したのは、“チームへのフィット力”。この決断がどう出るか、フロントの眼力が試される。

(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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