「楽しみが勝った」甲子園で“夢の対決” 2年生右腕を支えた北海道の絆…交わした約束

北海道各地から集まった仲間 野球が結んだ小学生時代の縁
「楽しみの気持ちが勝っちゃった」。仙台育英・古川諒弥投手(2年)がそう振り返った相手は、甲子園開幕戦で顔を合わせた札幌日大・野川咲空外野手(3年)だった。第108回全国高校野球選手権大会は5日に甲子園球場で開幕し、仙台育英が札幌日大を3-1で下した。幼い頃から切磋琢磨してきた2人は、勝敗を超えて互いをたたえ合い、試合後には野川が古川にエールを送った。
2人が初めて顔を合わせたのは、小学生時代の北海道日本ハムファイターズ・ベースボールアカデミーだった。その後は野川の父・純平さんが北海道各地の子どもたちを集めて立ち上げたティーボールチームでともに汗を流し、夏は練習試合、冬は合宿を重ねながら腕を磨いた。
純平さんは「ファイターズアカデミーで知り合い、親御さんとも仲良くなりました。私が作ったチームにも参加してもらい、ずっと一緒にプレーしていました」と当時を振り返る。全道から集まった仲間と野球を楽しみながら成長する環境の中で、2人の絆は深まっていった。
一方、古川の父・恵介さんも「『一緒に練習をやらないか』と声を掛けてもらった」と懐かしむ。森町から士別まで7〜8時間も車を走らせて通い、刺激を受け続けた日々だった。「北海道のチームと甲子園の開幕戦で対戦できるなんて、本当にありがたいこと」と感慨深げに話した。
高校進学後は古川が仙台育英、野川が札幌日大へ進み、それぞれ違う道を歩んだ。それでも交流は続き、開幕カードが決まると古川は純平さんへLINEを送った。「今までお世話になっていましたし、挨拶しなきゃいけないと思った」。返ってきたのは「お互いのベストを出し合って、お互いぶつかり合おう」という言葉。「変に気を遣わずに試合へ入ることができました」と背中を押された。
「楽しみの気持ちが勝っちゃった」聖地で交わった幼なじみの真剣勝負
野川は「2番・中堅」で先発出場し、古川は先発マウンドを託された。夢だった真剣勝負が甲子園で実現。初回に迎えた“初対戦”は、野川が四球で出塁したが、3回は古川が遊ゴロに打ち取った。6回は野川が再度四球で出塁した。この日、野川は2打数無安打2四球。一方の古川は6回途中まで2安打1失点、7奪三振4四球で勝利に貢献した。ただ、本人にとっては反省も残る内容だった。
「楽しみの気持ちが勝っちゃって、丁寧に投げることへ意識が向かなかった」。右腕は、幼い頃から知る相手との対戦に気持ちが高ぶったことを明かした。「野川さんにフォアボールを出してしまった。相手が誰であろうとアウトを取るという考えを貫ければ、もっと楽に投げられたと思います」と冷静に振り返った。
野川も「自分が(小学校)4年生、向こうが3年生の頃から知っているんです。本当に対戦を楽しみにしていました」と笑顔を見せる。「身体能力が高くて、どんどん成長していく選手だと思っていました。今日も気持ちがこもっていて、本当に1対1を楽しみながら投げているんだなと感じました」と、成長した幼なじみをたたえた。
卒業後は米国の大学進学に挑戦する予定の野川は、「日本一を必ず達成してほしい。まだ2年生なので、どんどん成長して日本一を取っていただきたい」とエールを送った。古川も「次は自分の持ち味である、一球一球丁寧にアウトを重ねる投球を見てもらいたい」と応え、互いのさらなる飛躍を願った。
試合後、古川は純平さんへ再びLINEを送り、「札幌日大さんと対戦できて本当に良かったですし、楽しかったです」と感謝を伝えた。一方で「納得いかないところも多くあった」と自身の投球を見つめ直し、「次戦に向けてしっかり調整して、花咲徳栄に必ず勝ちます」と決意もつづった。北の大地で育まれた縁は、甲子園で新たな1ページを刻んだ。古川は野川の思いも胸に、12日の2回戦・花咲徳栄(埼玉)戦へ向かう。
(横井洸太 / Kota Yokoi)