「人生は1回しかない」 偏差値70の東筑、参考書持参で甲子園…父の背中追い医学部志望

医学部を志す東筑・橋元健太【写真:加治屋友輝】
医学部を志す東筑・橋元健太【写真:加治屋友輝】

勧められた医師の道への専念…野球との両立選んだ3年間

 甲子園の舞台を終えても、夏の戦いは終わらない。第108回全国高校野球選手権大会は6日の第2日、1回戦2試合が行われ、9年ぶり7度目の出場を果たした東筑(福岡)が神村学園(鹿児島)に1-5で敗れた。偏差値70を誇る同校には、医学部や国立大を目指す部員も多く在籍。選手は敗戦の悔しさをにじませながらも、視線は次なる目標に向いていた。

 宿舎へ持ち込んだ荷物は、バットやグラブだけではない。学校から出された課題や参考書もバッグに詰めて、最後の夏に挑んだ。

 医学部を志す橋元健太内野手(3年)は、宿舎で「学校で出されている課題と、僕は物理選択なので物理をやりました」と話す。あくまで「文武両道」が基本。帰郷後は気持ちの切り替えも重要になるが、「そう簡単にはできないかなと思います。でも、(受験勉強を)やらないといけないとは思うので、少しずつやります」と胸の内を明かした。

 父・悟さんは医師。幼い頃から医療の仕事を身近に感じながら育ち、自然と医学部を志すようになった。高校進学を控えた中学3年時、学力を評価した塾長から「野球をしないで医学部を目指さないか」と勧められた。まだ15歳。大きな選択をする必要に迫られるなか、自ら発した一言で“覚悟”を決めた。

「人生が2回あるんだったらその道を選ぶけど、1回しかないので自分は野球もします」

 東筑入学後の生活を支えたのは、時間を無駄にしない意識だった。橋元は「夜が苦手なので、1時間だけ勉強して早めに寝て、朝に(勉強)するのがルーティンでした」と振り返る。

 母・聖子さんも「そこからは野球をすることを目標に文武両道で頑張っていました」と懐かしむ。「小柄なので大変かなと思っていましたが、『甲子園に行きたい』という気持ちをずっと忘れずにいてくれたので、それが叶って本当に良かった」と目を細めた。

1回戦で神村学園に敗れた東筑ナイン【写真:加治屋友輝】
1回戦で神村学園に敗れた東筑ナイン【写真:加治屋友輝】

「勉強は野球のプラス」文武両道が育んだ集中力

「6番・中堅」で先発した中谷遼外野手(3年)も橋元と同じく医学部志望だ。宿舎には数学や英語の問題集を持ち込んでいた。それでも、甲子園では参考書を開く余裕さえなかったという。「チームでも野球を精いっぱいやろうという話をしていたので、野球に集中しました」と清々しく振り返った。

 春先から受験に集中している同級生が多いといい、「自分たちは野球をやれる分だけ精いっぱいやって、終わったら切り替えて勉強しようという気持ちでした」と明かす。これまでは練習の合間で勉強時間を確保したが、ここから巻き返すつもりだ。

 山下聖士監督も「勉強をおろそかにしていれば野球にもつながってくるので、『勉強はちゃんとやらないとダメだよ』ということは常々言っています」と話す。平日練習は午後8時まで。専用グラウンドではないため、使える時間も場所も限られる。それでも効率を意識し、メニューの切り替えや選手の動きまで徹底して磨いてきた。

「練習以外の過ごし方や考え方が、野球の勝負には大きく影響します。彼らは勉強を通して集中力の高さを磨いてくれている。決して勉強することがマイナスではなく、むしろプラスに働いていると思っています」と指揮官。時間の使い方を考え続けた日々は、確かな力となって表れた。

 聖地で得た経験、野球と勉強を両立してきた日々は、これから歩む人生の礎となる。東筑ナインは、次は受験という舞台で、自らが掲げた夢に向かって挑戦を続けていく。

(横井洸太 / Kota Yokoi)

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