甲子園が揺れた“バズる応援” 同級生の絆が生んだ奇跡の光景…2年半が詰まった「ありがとう」

桑原の「やってほしい」から実現、三浦は同じクラスの親友
親友の打席を、アルプス席から全力で後押しした。第108回全国高校野球選手権大会は7日、甲子園球場で1回戦4試合が行われ、八幡商(滋賀)は健大高崎(群馬)に1-7で敗れた。アルプス席が一体となった迫力満点の“異色の応援”は勝利には繋がらなかったが、クラスメートでもあり、ともに甲子園を目指した主将・桑原太暉外野手(3年)と三浦瑳友応援団長との絆は聖地に“足跡”を残した。
太鼓に合わせて「ウゥ! ウゥ!」と野太い声を響かせ、徐々にテンポを上げていく。アルプス席で披露されたのは、今年のサッカー北中米ワールドカップ(W杯)でも注目されたノルウェー代表の応援「バイキング・ロー」だった。
大観衆が集まった甲子園でも、その迫力は十分に伝わった。三浦は「結構声が通るなと思って。ファンの方も盛り上がってくれるんで、めちゃくちゃいいです」と手応えを口にした。
発案したのは桑原だった。サッカー好きでW杯もよく見ていた主将から「やってほしい」と頼まれたのがきっかけだったという。一方の三浦は「僕はサッカー興味なくて」と笑う。それでも親友からのリクエストを引き受けたのは、力になりたいという思いがあったからだ。「桑原がメンタル面で鼓舞されるといいなと思っています」。この日も桑原の打席で、アルプス席から特別なエールを届けた。
2人は同じクラスで、普段から仲がいい。チームをまとめる主将も、親友の前では「ちょっといじられキャラ」だという。グラウンドを離れても時間をともにし、高校生活を過ごしてきた。

ともにベンチ入りを目指した3年間「ありがとうっていう言葉じゃ足りない」
最初から応援する側とされる側だったわけではない。三浦も外野手としてベンチ入りを目指し、同じグラウンドで汗を流してきた。夏も冬も朝から一緒に自主練習に励み、ハーフバッティングや室内練習場で互いに全力でボールを投げ合った。「結構バチバチにやった」。甲子園を目指し、切磋琢磨した時間が2人にはあった。
最後の夏、立つ場所は分かれた。桑原は主将としてグラウンドへ、三浦は応援団長としてアルプス席へ。それでも、かつてともに汗を流した親友が聖地に立つ姿は特別だった。「知っている人が甲子園の舞台に立ってるのって、グッときて感動する」。だからこそ、「精一杯の応援をしたいです」と声を張り上げた。
思いは桑原にも届いていた。地方大会を勝ち抜いたあと、三浦にかけたのは「お前が応援してくれているおかげや」という言葉だった。三浦も「ベンチ外とか、マネジャーとかにも気を配って、その感謝とかいろいろしてくれて、めちゃくちゃいいやつ」。近くで過ごしてきたからこそ知る、周囲への感謝を忘れない素顔を明かした。
甲子園で敗れた桑原は、アルプス席の親友へ感謝を伝えた。「ずっと率先して、応援団長として春もみんなを引っ張ってやってくれていた」。ともにベンチ入りを目指し、苦しい時に率先して動く姿も見てきた。それだけに「『ありがとう』っていう言葉じゃ足りないぐらい、本当に感謝を伝えたいです」と思いを込めた。
同じグラウンドで白球を追ってきた2人は、最後の夏、それぞれの場所から甲子園に臨んだ。桑原がプレーでチームを引っ張れば、三浦はアルプス席から声を枯らした。親友の「やってほしい」から始まった“異色の応援”には、ともに汗を流してきた2人の3年間が詰まっていた。
(横井洸太 / Kota Yokoi)