甲子園でぶっつけ本番「間に合わない」 顧問が頼った卒業生…初勝利を後押しした“魅惑の踊り”

甲子園に駆け付けた東日大昌平の応援団【写真:加治屋友輝】
甲子園に駆け付けた東日大昌平の応援団【写真:加治屋友輝】

卒業生も緊急参戦、東日大昌平ナインを支えた「フラガール」

 ぶっつけ本番でも笑顔で踊り、試合を彩った。第108回全国高校野球選手権は大会第4日の8日、甲子園球場で1回戦4試合が行われ、第2試合は春夏通じて初出場の東日大昌平(福島)が白樺学園(北北海道)と対戦。9回に勝ち越し点を奪って2-1で初戦を突破した。三塁側のアルプススタンドには「フラガール」が登場。甲子園仕様のフラダンスで記念すべき初勝利をアシストした。

 福島県いわき市に校舎がある東日大昌平。同市にはフラダンスで有名な「スパリゾートハワイアンズ」がある。同校にはチアダンス部がない代わりにフラダンス部がある。平日は週5日、放課後に約1時間30分の部活動を行っており、7月25日の福島大会決勝で学法石川を下し甲子園出場を決めると、ほどなくしてアルプススタンドでの応援が決まったという。

 同部で10年以上、顧問を務める木村美咲先生は「急に応援することが決まって急いで準備を始めました」と初出場校らしくドタバタでプランが動き出したと説明する。「先週末ぐらいからやり始めたんです。動画を撮って、卒業生にも送って、それぞれ練習してきました」。

 ハワイアンズでフラガールをしている同校の卒業生もいるが、さまざまな制約があり、甲子園で踊るのは難しい。そんな中、全国に散らばっていた卒業生14人も連絡を受けると仕事を調整して“参戦”。現役部員の6人を合わせて20人のフラガールチームが結成された。

 家庭科の教諭でもある木村先生は、自慢の腕も駆使して衣装も製作。「時間がなさ過ぎて、業者に頼んでも間に合わない。自分で作るしかないと思いました。相当時間はかかりましたし大変でしたね」。スクールカラーである赤のシャツとスカートはお手製である。黄色いポンポンは素材を購入して部員が作成。急ピッチで準備を進めてきた。

 木村先生と現役部員は、試合前日の7日午後2時に吹奏楽部のメンバーとともにバスで学校を出発。滋賀県内のホテルで1泊し、卒業生組が合流して20人全員がそろうと、木村先生が「本当は休憩で立ち寄ったけど、休んでる場合じゃない」と声をかけて、初めて全体練習を行って本番に備えた。

甲子園に駆け付けた東日大昌平の応援団【写真:加治屋友輝】
甲子園に駆け付けた東日大昌平の応援団【写真:加治屋友輝】

12年間続けてきた3年生部員「少しでも興味を」

 普段は広いスペースで広がって踊るため、球場通路の階段に縦一列に並んで息を合わせるのは簡単ではない。しかも階段の幅も狭い。サンダル姿で動きも制限される中、木村先生が「選手に打ってほしいという気持ちを込めて、振り付けに新しい動きも入れています」と甲子園仕様のダンスを考案。攻撃時に魅惑の踊りで盛り上げ続けた。

 ベンチ外の選手の横に立ち、最前列で笑顔を振りまきながらリズムを取ったのは3年生部員の田中徠羅(らいら)さん。「お遊戯会で教えてもらってから12年間ずっと続けています」と小1からフラダンスの魅力にはまった。

「球場でやるのは全然違います。足元が狭くて、狭くてちょっと難しいです。普段はもっと幅を取って踊っているので、工夫しながら歩幅を調べて、練習してきました。全員で合わせて練習したのはきょうが初めて。お客さんの数が凄く多いし、ワクワクドキドキ、緊張しながら、楽しんでやっています」

 全国中継される甲子園大会で地元の魅力の一つを発信。「フラダンスは楽しいということが伝わればいいかな。見た人が少しでも興味を持ってくれたらうれしい」とアピールした。

 チアガールはいなくても、フラガールがいる。ぶっつけ本番の即席チームとは思えないほど、息の合った動きでグラウンドの選手たちを後押し。初出場で初勝利という歴史を刻んだ1ページに、急造のフラガールチームが鮮やかな彩りを加えた。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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