初出場で「費用の面が…」 3000万円との情報も、応援団は0泊3日の弾丸も甲子園堪能

今大会初のタイブレークの末にサヨナラ負け
初出場校にはさまざまな苦労がある。第108回全国高校野球選手権は大会第5日の9日、甲子園球場で1回戦4試合が行われ、第3試合は春夏通じて初出場の八王子実践(西東京)が鳴門渦潮(徳島)と対戦。9回2死から同点に追いつく粘りを見せ、今大会初のタイブレークに持ち込んだが、延長10回にサヨナラ負けを喫した。
ぎっしり埋め尽くされた三塁側のアルプススタンドが揺れる。0-1の9回2死一、二塁。代打で登場した金子侑樹投手(3年)はフルカウントからの外角直球を右前にはじき返した。スタートを切っていた二塁走者が生還。土壇場でスコアボードに歴史的な「1」が点灯すると、詰めかけた大応援団から拍手と大歓声が湧き起こった。
後続が倒れて勝ち越せなかったが、スタンドが沸き返るドラマは続く。その裏、先頭打者の一ゴロで塚原翔太投手(3年)がベースカバーに入ったが、ヘッドスライディングした打者走者の手が早いと判断されて一度はセーフと判定された。ここで河本ロバート監督がリクエスト。ビデオ検証の結果、判定が覆ると地鳴りのような拍手でナインを後押しした。
9回を無失点で切り抜けて今大会初のタイブレークに突入。1死二、三塁と好機を広げたが得点できず、その裏にサヨナラを許し、歴史的な勝利とはならなかった。それでも最後まで諦めない粘りで好ゲームを展開。河本監督は「力及ばず負けましたけど、同点に追いついた場面はしびれました。大きな声援はずっと聞こえていてありがたかったです」と後押ししてくれた応援に感謝した。
三塁側のアルプススタンドは満員。野球部OBも約360人が駆けつけた。在校生の約260人と関係者らはバス14台で前日8日の午後8時に東京を出発。車内泊を経て球場入りし、ナインに声援を送った。試合後には再びバスで帰京。ホテルには泊まらない0泊3日の超弾丸ツアーで学校創立100周年のメモリアルイヤーの初聖地を楽しんだ。

目標は3000万円? クラウドファンディングで資金集め
八王子実践にとって、初めての甲子園は未知の世界。英語教諭で野球部顧問の宮野拓己先生は「いろんな方に話を聞いて準備を進めましたけど、初めてのことなので苦労はしました」と説明。特に頭を悩ませているのが費用だ。宿泊費や移動費、バスのチャーター費など「いくらかかっているか、費用の面が見えていません」と漏らした。
「初出場で、ウチみたいに強豪ではない高校だと、部費を含めてプール金が一切ありません。費用はだいたい3000万円ぐらいはかかると言われているようですけど、どこから集めるのかを含めて見えていない部分があります。それが我々の課題です」
クラウドファンディングで資金を募っているが「手数料が結構かかります。18%も取られますので、現状だと金額が見えない。赤字なのか足りているのかが分からない状況です」という。思わぬところで出費がかさんでいる可能性もあるだけに、不安は隠せない。
コロナ禍以降、八王子実践は「吹奏楽部が応援に来ることがなくなった」という。毎年依頼はしているものの「顧問が1人だけで、例えば熱中症になると破綻してしまう。学校として態勢が不十分な状態が続いている」と嘆く。西東京大会は決勝戦以外、地声の応援でカバー。甲子園は姫路高のブラスバンド部の友情応援を受け、一丸となってナインを勇気づけた。
グラウンドの選手も、スタンドの応援団も、分からないことだらけで臨んだ初めての夢舞台。宮野先生は「分からないことばかりでも、それも勉強だとありがたく感じながらやっています」と前向きに取り組んできた。試合は野球ファンを満足させるような大熱戦。野球部の伝統も、資金調達のノウハウも、ここから積み上げていくしかない。
(尾辻剛 / Go Otsuji)