「信頼できない」後輩捕手…エースが認めていた素質 甲子園で“完成した”バッテリー

智弁和歌山戦に先発した社・岩井秀耶(左)と山本航輝【写真:加治屋友輝】
智弁和歌山戦に先発した社・岩井秀耶(左)と山本航輝【写真:加治屋友輝】

社は3年ぶり3回目となる夏の甲子園出場

 エース好投の裏には後輩捕手との絆があった。第108回全国高校野球選手権大会の第7日は11日、甲子園球場で2回戦4試合が行われ、第3試合で社(兵庫)は智弁和歌山と対戦。先発した岩井秀耶投手(3年)が9回2失点の力投を見せるも、1-2で惜しくも敗れた。

 社エースの岩井はサイドスロー気味のフォームから最速151キロを誇るプロも注目する本格派右腕。兵庫大会では33回2/3を投げ、自責点は僅かに1点。防御率は驚異の0.27を記録した。

 岩井は2、3回に先頭打者への長打から1点ずつを失ったものの、4回以降はゼロを並べた。岩井の熱投に応えるかのように、打線は7回、4番・小倉臣斗外野手(3年)の適時二塁打で1点を返した。

 9回裏2死、あと一歩と追い詰められたその時、岩井がベンチ前で投球練習を始めた。「みんななら逆転、同点にしてくれると思って、自分は勝つ気しかしていなかったので」。エースの願いが通じたのか、2死から小倉が安打を放ち執念を見せるも、得点には繋がらず。あと一歩及ばなかった。

 試合後、山本巧監督は岩井と山本航輝捕手(2年)のバッテリーを絶賛。「短い時間で語り尽くせないくらい、この1年で成長してくれました。もちろんチーム全員にも言えることですけどね」。この試合でも150キロを計測するなど、プロ注目右腕に成長した岩井は大学進学を明言。4年後のプロ入りを目指し、今後は身体づくりから徹底的に取り組むという。

 昨秋に結成された岩井と山本のバッテリー。しかし、信頼関係を築くまでの道のりは順風満帆ではなかった。

岩井が山本に抱いていた物足りなさ「信頼できない」

 敗れはしたものの、9回を投げ切りエースとしての役割を全うした岩井。試合終了後に真っ先に溢れたのは、バッテリーを組んだ山本への思いだった。

「(試合を)楽しめたのがまず良かったというのと、あとは山本とバッテリーを組めたことが本当に楽しかったし、良いバッテリーになれたなと思いました」

 山本は5番打者を任され、兵庫大会では打率.381をマーク。さらに防御率0.32を誇る難攻不落の投手陣を引っ張ってきた。しかし、岩井の山本に対する“第一印象”は「信頼できない」というものだった。

「(山本が)入ってきた時から能力の高さは感じていたんですけど、全然考えが足りなくて……。信頼できないなという感じでした」。山本の素質を認めつつも、捕手として物足りなさを感じていたという。

 山本は入学当時を回顧し「岩井さんの球が凄くて……。最初は捕るので精一杯という感じでした」と、少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。半年前まで中学生だった山本にとって、150キロに迫る直球は恐怖そのもの。配球まで気にしている余裕はなかったという。

 それでも必死に喰らいついた。私生活から綿密なコミュニケーションを心がけ、野球に向き合う“姿勢”を学んだ。

「怖がらず相手に向かって行くこと、これが一番学んだ部分です」。その言葉通り、山本は直球を活かした強気の配球。岩井は1度も首を振ることはなかった。

 エースとチームを引っ張る、まさに“扇の要”としての役割を2年生ながら立派に果たした山本。今度は最上級生として――。再び社を聖地へ導くことを誓った。

(井上怜音/ Reo Inoue)

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