3年前の選抜出場より「予算が膨らんで…」 直面した物価高、ノウハウなき公立校が戦った“苦労”

公立校・大分商、高騰する応援団の遠征費をクラウドファンディングで募る
第108回全国高校野球選手権大会の第9日は13日、甲子園球場で2回戦が行われ第4試合で、13年ぶりとなる夏の甲子園出場を果たした大分商は英明(香川)と対戦し、1-6で敗れた。晴れ舞台で力を出し切った同校だったが、公立校ならではの知られざる苦労とも戦っていた。
大分大会決勝で津久見を下し、悲願の甲子園切符を掴み取った大分商。公立校の快挙に地元は沸き立ったが、その裏で重くのしかかってきたのが応援団の遠征費用だった。OBや学校関係者ら約1000人が大分から甲子園へバス移動するだけでも、多額の費用が必要となる。
そこで保護者会を中心とする「甲子園出場募金実行委員会」は、クラウドファンディングを活用した支援募集を開始した。代表の河野文洋さんは「県の公立校ということもあり、資金調達には厳しい面がありました。それでも熱い応援をどうにか形にして届けたいと思い、県民の皆さんにご協力を呼びかけました」と語る。
さらに追い打ちをかけたのが近年の物価高騰だ。エネルギー価格の上昇や円安、原材料費の高騰により、あらゆるコストが上がり続けている。
「2023年春の選抜大会に出場した際と比べても、予算はかなり膨らんでしまいました。それでも選手、指導者、保護者が三位一体となり『必ず最高の景色を見に行こう』と一丸で取り組んできました」
13年ぶりの夏の聖地…ノウハウなき教諭の苦戦「本当にてんてこ舞い」
苦労は資金面だけにとどまらない。アルプススタンドの応援団を統括する大分商の一法師(いっぽし)克也教諭は、「2回戦に入って少し気持ちの余裕ができましたが、1回戦の準備は本当にてんてこ舞いでした……」と振り返る。
総括教諭として1000人規模の応援団を引率。生徒は素直に指示に従ってくれたが、甲子園には独自の応援ルールや配置の決めごとが複数存在しており、大規模な集団を動かす難しさに直面した。
また、3年前に選抜出場を経験しているものの、公立校ならではの「人事異動」が壁となった。教員の入れ替わり周期が早まっていることもあり、大掛かりな遠征のノウハウが校内に蓄積されにくいのだ。「先生方が次々と変わってしまうため、引き継ぎが難しい面があります」と話す。
手探りの状態のなか、一法師教諭は、同じ大分県内にある甲子園常連校である私立・明豊の副校長にアドバイスを求めた。「たまたま知り合いだったこともあり、相談ができて本当に良かったです。おかげで少しだけ心にゆとりができました……」と、汗を拭った。
試合は惜しくも敗退となったが、ピンチの場面ほどアルプススタンドからは大きな声援が響き渡り、ナインの背中を押し続けた。大分商応援団が見せた団結力と熱い思いは、多くの観客の記憶に深く刻まれたはずだ。
(神吉孝昌 / Takamasa Kanki)