「世界一以外は価値がない」ド軍指揮官が告白する壮絶プレッシャー のしかかる「恐ろしいほどの期待」…常勝軍団の覚悟と哲学

14年間で13度目の地区優勝を果たしたドジャース【写真:ロイター】14年間で13度目の地区優勝を果たしたドジャース【写真:ロイター】

14年間で13度の地区優勝…ド軍栄光の影に隠された過酷な苦難と1球への狂気

 狂乱と美酒の香りが立ち込めるロッカールームの床は、すでにシャンパンの泡でぬかるんでいた。熱いハグを交わす選手たちの輪から数歩引き、微笑みを浮かべてその光景を見つめる2人の男がいた。ドジャースのチーム編成を統括するアンドリュー・フリードマン編成本部長と、現場でスター軍団を指揮するデーブ・ロバーツ監督である。

 過去14年間で13度目と、他の追随を許さぬペースで地区優勝を果たしたドジャース。他球団が喉から手が出るほど欲する「常勝」の称号を、なぜ、これほどまでに当たり前のように手にし続けることができるのか。シャンパンファイトが行われた直後の取材エリアで明かされた2人の言葉から、常勝軍団の強固な組織論、そして「世界一以外はすべて失敗」と切り捨てる超高圧な世界観の本質が見えてきた。

 昨季のワールドシリーズ連覇に続き、今季もナ・リーグ西地区を制したドジャースだが、道のりは決して順風満帆なものではなかった。先発ブレイク・スネルは開幕から出遅れ、守護神のエドウィン・ディアス、先発右腕タイラー・グラスノー、アンディ・パヘス、ついには大谷翔平と主力が相次いで離脱。巨額補強ゆえに高まり続ける周囲からの容赦ないプレッシャー。取材の輪の中に立ったフリードマン氏は、喧騒の中で冷静に今季を振り返った。

「毎年その渦中にいると、客観的な視点を持つのは本当に難しいものだ。当然ながら、今年も今年でトラブルや想定外の課題が相次ぎ、いくつかの面で想定以上のハードワークを強いられた。だが、我々のビジネスにおいて最も重要なのは、どのようにレギュラーシーズンを締めくくり、10月のポストシーズンをどう迎えるかだ。幸いにも打線が活気を帯び始めており、投手陣の層の厚さにも非常に大きな手応えを感じている」

 過去14年で13度の地区優勝という圧倒的な安定感。その強さの源泉を問われると、フリードマン氏は苦笑いを浮かべつつ、組織の底に流れる「狂気とも言える集中力」について語った。

「過去を振り返ることはあまり得意ではない。毎年が独自の課題を抱えた特別なシーズンだからだ。連覇や3連覇を目指す戦いは極めて難解だが、我々の強みは他でもない、1球ごと、1イニングごとに集中する姿勢にある。過去の栄光にも未来の皮算用にも目もくれず、目の前の1球だけに全神経を注ぐ。このマインドセットこそが他球団との決定的な差を生み出している。さらに言えば、ベテラン選手たちの豊富な経験値と判断力は、10月の極限の勝負所で最大の武器となるはずだ」

 また、右上腕二頭筋の炎症で負傷者リスト入りしている大谷の調整経過についても言及。「非常に順調だ。着実に必要なステップを上がっており、レギュラーシーズン中の復帰を見込んでいる」と語り、10月の決戦に向けたピースが着々と揃いつつあることを示唆した。

優勝を重ねるごとにドジャースにのしかかる重圧【写真:ロイター】優勝を重ねるごとにドジャースにのしかかる重圧【写真:ロイター】

ロバーツ監督が語るドジャースの重圧「世界一以外は価値がない」

 だが、物語が真の面白みを帯びてくるのはここからだ。常勝軍団を率いる現場のデーブ・ロバーツ監督の言葉には、華やかな勝利の裏側に潜む「地獄のようなプレッシャー」と「強烈なエゴのぶつかり合い」を生々しく物語るリアルが詰まっていた。

「毎年シャンパンを開けていて、正直飽きたり慣れてしまったりすることはないのか?」。報道陣からのやや意地悪な質問に対し、ロバーツ監督はニヤリと笑い、即座に首を振った。

「絶対にないね。野球は厳しいスポーツだし、このドジャースのユニホームを着る以上、常に恐ろしいほどの期待が寄せられる。だからこそ、こうして祝杯を挙げる瞬間は何度経験しても色あせることはないんだ」。こう切り出すと、ドジャースという巨大組織の凄絶な裏側を告白し始めた。

「このチームでは、ワールドシリーズで優勝しなければ『失敗』と見なされる。そんな理不尽とも言える高い期待が最初から存在するんだ。オフシーズンの時点から、周囲からは『3連覇はどうだ』『世界一以外は価値がない』と囁かれ続ける。選手たちの耳にも当然入る。その中で彼らを脱線させず、目の前の『一日一日』に集中させ続けること。これこそが私の最も難しい仕事であり、同時に最もやりがいを感じる部分なんだ」。

デーブ・ロバーツ監督はすでに先を見据えている【写真:ロイター】デーブ・ロバーツ監督はすでに先を見据えている【写真:ロイター】

 シャンパンファイト直前、ロバーツ監督は興奮冷めやらぬ選手やスタッフ全員をロッカールームに集め、こう声を張ったという。

「いいかお前たち! 私たちはこのリーグで最も才能があり、最も賢く、最もタフで、最もハングリーなチームだ! 今夜はこの瞬間を思い切り楽しもう……だがな、明日も試合があるぞ!」

 明日も試合がある――。地区優勝を決めた数分後に投げかけられたこの一言こそ、ドジャースの強さの神髄と言える。ロバーツ監督は笑いながら明かす。

「なにせ私たちはシャンパンファイトの場数を重ねすぎているからね(笑)。盛大に祝いながらも、絶対に翌日に引きずらないという点において、我々はメジャーで最も優秀なチームなんだよ。明日にはもう宿敵ジャイアンツと戦わなければならない。安堵感? あるわけがない。私たちはまだ上位2シード枠(ポストシーズン不戦勝)を狙っているんだからね。残り9試合、仕事は山積みだ」

「世界一以外は失敗」という容赦ないプレッシャーを全身で受け止め、祝杯を挙げたその瞬間から「明日の1勝」へと冷徹に思考を切り替える。美酒の泡が消え去るよりも早く、常勝軍団のスターたちはすでに、次なる獲物を狩る目つきへと戻っていた。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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