台湾から野球留学→仮面浪人で東大合格 1日15時間の猛勉強…支えだった画面越しのユニホーム

昨年まで立大生…初スタメンで放った「特別な」一打
昨年まで通っていた大学を相手に、記念すべき一打を放った。10日、東京六大学野球秋季リーグ戦第5週第1日が神宮球場で行われ、東大は立大に3-15で敗れた。「6番・指名打者」でリーグ戦初スタメンを果たしたリ・ブンシュン内野手(1年)は8回、リーグ戦初安打となる右前打を記録。台湾から日本へ渡り、立大在籍中に東大を再受験。異色の経歴を持つ1年生が、“古巣”を相手に第一歩を刻んだ。
14点を追う8回無死。リはこの回から登板した立大3番手・中澤欣士投手(3年)の変化球を捉え、右前へ運んだ。本人によると球種はチェンジアップ。「反応で打ったと思います。気づいたらもう一塁に立ってました」と笑みを浮かべた。リーグ戦4試合目での初安打に「正直焦りなどもありましたが、やっと一本出すことができて、今は安堵な気持ちです」と胸をなで下ろした。
初スタメンも気負いはなかった。「特別なことをやろうとはしていなくて、普段通りでした」。この日は4打数1安打。大久保裕監督は「今のメンバーの中でヒットが出そうで、長打力があるため、起用してみたんですが、ヒットが出て良かった」と、起用の理由を明かした。
初安打を放った相手が立大だったことは特別な意味がある。リは昨年、立大に在籍しながら東大合格を目指して勉強に励んだ。「昨年1年間、立教さんに在籍して、色々お世話になったところもあるので、自分の大学初ヒットが立教さんというのも、特別な意義があると思っています」と、立大への感謝を口にした。
1日15時間の猛勉強…支えになった東大野球部への憧れ
リは台湾・新北市出身。小学1年から野球を始め、テレビ中継で見る甲子園に憧れを抱いた。小学4年頃から日本語を学び、来日前には日本語能力試験の最難関「N1」に合格。2022年、巨人・坂本勇人らを育てた金沢成奉監督の指導を受けるため、明秀日立高に進学した。寮の消灯後や遠征のバスでも勉強を続けたが、高校3年夏は茨城大会2回戦で敗退。甲子園出場はかなわなかった。
それでも、もう1つの夢を追い続けた。東大から日本ハムに入団した宮台康平投手に憧れ、東大野球部でプレーすることを目標に掲げ受験した。しかし結果は不合格。立大に進学したが、東大への思いは消えなかった。「やっぱり東大野球部のユニホームを着て、神宮で戦いたいという気持ちがすごく強かったので、1年間浪人して勉強し直してでも東大野球部に入りたかったです」。再挑戦の原動力は、東大のユニホームを着て神宮でプレーすることだった。
立大在籍中は、1日15時間近く勉強に励んだ。精神的に苦しい時期もあったが、諦めるという選択肢はなかった。「メンタル的に弱かった時もありましたが、そういう時は東大野球部の試合を見たりして、元気をたくさんもらいました。諦めようという心境はなかったです」。画面越しに見つめた東大野球部の姿が、勉強を続ける支えになった。
そして2026年春、念願の東大理科2類に合格。明秀日立高から初の東大合格者となった。台湾から日本へ渡り、甲子園を目指して白球を追い、仮面浪人を経てつかんだ夢。東大のユニホームで迎えた立大戦では、待望のリーグ戦初安打も生まれた。
リは4年生が掲げたスローガン「何が何でも」を胸に秘め、プレーを続けている。「大差でも1点ずつ積み重ねれば、野球は時間制限がないので、最後まで何があるかわからない」。諦めずに挑戦を続ける姿勢は、自らの歩みにも重なる。
「自分として、良い選手の定義はチームを勝たせる選手なので、来年は2年生にもなるので、1勝でも多く東大野球部に勝利を捧げられるような選手になりたい」。憧れのユニホームを着て、神宮で刻んだ初安打を第一歩に、次はチームに勝ち点をもたらす一打を狙う。
(横井洸太 / Kota Yokoi)