ドジャースが2026年を締めくくる総括記者会見を開いた
ロサンゼルス特有の澄み渡る青空は陰を潜め、どんよりとした雲から冷たい雨が降りしきっていた。ワールドシリーズ(WS)3連覇の夢が絶たれてから6日後。静まり返った本拠地ドジャースタジアムの会見場で、2026年を締めくくる総括記者会見が開かれた。
「1年の最後に敗れたときは、誰であっても強い失望を感じるものだ。オフシーズンから春、そして長いシーズンにかけて、全員が膨大な時間と自分自身を注ぎ込んできたからね」
冒頭、暗い表情を浮かべながらそう語り始めたドジャースのアンドリュー・フリードマン編成本部長。31分間に及ぶ会見で最も多くの時間が割かれたのは、今季異変に見舞われた大谷翔平投手の健康状態と、来季以降の「二刀流起用法」についてだった。
今季の大谷は打者として139試合に出場し、打率.275、30本塁打、81打点、11盗塁、OPS.889をマーク。投手としても7月3日の先発を最後にマウンドを離れたものの、14試合で8勝2敗、防御率1.79と圧倒的な成績を残していた。
しかし、6月頃から左膝や右上腕二頭筋などに故障を抱えながらのプレーが続き、9月11日には移籍後初となる負傷者リスト(IL)入りを経験。ポストシーズンではブルワーズとのリーグ優勝決定シリーズ第4戦で特大の3ランを放ち意地を見せたものの、本来の爆発的な打撃には程遠かった。
フリードマン編成本部長は、大谷がシーズン後半に抱えていた満身創痍の状況を次のように明かした。
「手術という選択肢はない。だが、彼は膝に断続的な違和感を抱えており、それが収まったと思えば今度は上腕二頭筋のあたりに影響が出るといった具合だった。まるで『モグラ叩き』のように、同時にいくつかの異なる症状と闘い続けていたんだ」
一時はリーグMVPはもちろん、サイ・ヤング賞の有力候補だったが、次々と襲いかかる身体の異変。それでも大谷は一切の言い訳をせず、チームの勝利のためにグラウンドに立ち続けた。
「彼は『チームの勝利のためなら何でもやる』と言ってくれるし、本心からそう思っている。だが、痛みの限界や本当の体調を自分から口にするのが得意なタイプではない。怪我を抱えながらも8月中旬までMVP級の活躍を続けていたこと自体が驚異的だが、だからこそ我々がより注意深く彼の状態を見極めなければならなかった」
2022年型も「日本ハム型」も通用しない、ドジャースが直面する現実
では、完全復活を期す来季、大谷翔平の二刀流はどう運用されるべきなのか。
エンゼルス時代の2022年、大谷は「二刀流として史上最高のシーズン」を過ごした。15勝、34本塁打、219奪三振を記録し、近代野球で初となる「規定打席と規定投球回のダブル到達」という偉業を達成。ア・リーグ新記録となる62本塁打を放ったヤンキースのアーロン・ジャッジに阻まれ惜しくもMVPこそ逃したものの、投打の総合力ではMLBの頂点に立った。
しかし、その栄光の代償は計り知れないものだった。当時の大谷は登板日も休まずDHで出場し続けるフル回転を敢行した結果、レギュラーシーズン終了直後の10月上旬には心身ともに極限まで追い詰められていた。約5か月後に迫っていたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)出場についても「体調面を含めて、自分が万全な状態で出られるかどうなのか。ちょっと一回ゆっくりして、体をリセットして、そこからかなと思います」と漏らすほど疲れ切っていた。
30代を迎えた身体、そして10月がシーズン本番となるドジャースの長い戦いを考慮すれば、当時のように限界まで負荷をかけるスタイルを再現するのは不可能ですらある。
かといって、日本ハム時代のように「登板前後の日に完全休養を与える」という起用法も現実的ではない。ドジャースにおいて、大谷は不動の1番打者であり、打線の絶対的な核だ。登板のたびに前後のゲームを欠場させれば、打線の破壊力は大きく低下してしまう。
つまり、これまでの成功体験に頼るのではなく、「全く新しい第3の起用法」を模索しなければならない局面に来ているのだ。
この難題に対し、フリードマン編成本部長も「過去の経験に頼ることができない」と苦しい胸の内を明かす。
「彼が挑戦している二刀流は、球界において完全に前例がないことだ。だからこそ、我々にも参照できる過去のデータや他チームの事例が存在しない。『こうすれば成功する』という既成のガイドラインがない中で、我々は彼と一緒に手探りで正解を作り出していかなければならない」
球団フロントとトレーナー、そして大谷本人が膝を突き合わせ、来季の起用プランをゼロベースで構築する作業がこれから始まる。
「投手として開幕から復帰するのか、それとも登板間隔やイニング数を制限して徐々にビルドアップしていくのか。開幕からの1か月をどう管理し、どう評価していくか。議論すべき要素は無数にある」
ド軍のテーマは「10月に最も状態の良い大谷翔平をマウンドに送ること」
例えば開幕からの1か月は打者に専念し、後半戦へ向けて1イニングずつ、10球ずつというように徐々に投手としての強度を上げていく。こんな起用法も考えられそうだ。
新しい起用法を模索する上で、ドジャースが最優先事項として掲げるテーマは明確だ。それは「レギュラーシーズンでの負荷をコントロールし、10月のポストシーズンで最も状態の良い大谷翔平をマウンドに送ること」である。
「レギュラーシーズンでの貢献と、10月に万全の状態で臨むためのコンディショニング。この2つをどうやって両立させるかが最大の課題だ。長いシーズンを通じて彼をどう導くか、全員で知恵を絞り、常に評価と修正を繰り返しながら進んでいくしかない」
冷たい雨が打ちつけるドジャースタジアムで、フリードマン編成本部長の言葉が重く残った。
WS3連覇の夢は潰えた。しかし、敗北の悔しさを糧に、ドジャースは大谷翔平という唯一無二の才能とともに、誰も歩んだことのない新たな「二刀流の道」を切り拓こうとしている。
2027年春、アリゾナの陽光の下で提示される新たな解に、世界中が再び注目することになるだろう。
(小谷真弥 / Masaya Kotani)