「投げられなくなって腐って」地獄を見た男 挫折→2位指名…記者だけに明かした苦悩

ヤクルトから2位指名を受けた東北福祉大・佐藤悠太【写真:川浪康太郎】
ヤクルトから2位指名を受けた東北福祉大・佐藤悠太【写真:川浪康太郎】

東北福祉大・佐藤悠太がヤクルト2位指名

「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が22日、都内で開催され、東北福祉大の佐藤悠太外野手がヤクルトから2位指名を受けた。 佐藤は身長181センチ、体重87キロの恵まれた体格を生かして飛距離のある打球を飛ばす右の強打者。高校時代にイップスを発症して投手から野手に転向した苦労人が、大学で花を咲かせて夢の扉をこじ開けた。

「驚いたというのが一番です」

 指名直後、記者会見場に姿を現した佐藤は、開口一番そう発した。「まさかこんなに早く呼んでいただけるとは思わなかったので、自分でもびっくりしています」。本人が驚くのも無理はない。ここまでの野球人生は決して順風満帆ではなかった。

 佐藤は神戸市出身。地元の強豪・報徳学園高には投手として入部したが、度重なる怪我に見舞われ、2年時にはイップスによりストライクがほとんど入らない状況に陥った。その後、指導者の勧めで外野手に転向。毎晩自宅で約1時間素振りをするなど急ピッチで打撃を磨き、3年夏は背番号20ながらスタメン起用されるまでに成長した。

 東北福祉大では体重を15キロほど増やし、圧倒的なパワーを身につけた。部内の熾烈な競争を勝ち抜いて1年秋からリーグ戦の出場機会をつかむと、3年春からは中軸を打ち続けた。

 昨年の全日本大学野球選手権では最高殊勲選手賞を獲得。青山学院大との準決勝では中西聖輝投手(現中日)から3安打、鈴木泰成投手(ソフトバンク1位指名)からバックスクリーンへの特大弾を放ち、その名を全国区にした。

東北福祉大・佐藤悠太【写真:小林靖】
東北福祉大・佐藤悠太【写真:小林靖】

望んだ道を開くためには「コツコツと頑張る」

 筆者は佐藤がイップスを発症した過去を明かしてくれた日を鮮明に覚えている。昨年の4月26日。リーグ戦で「人生初」だという1試合2本塁打をマークした試合後、その手応えについて興奮気味に振り返りつつ、高校時代の話をしてくれた。

「思うように投げられなくなって腐っている時に野手転向を勧められて、最後の夏はベンチに入ったんですけど背番号20で。大学ではもっと上を目指したいと思い、知っている先輩もいなかったのですが、一番プロに近いと感じた福祉大に来ました」

 通常、この類の話は記者が過去をじっくりと深掘りする中で知ることが多い。しかし、佐藤は自ら詳細に野手転向と東北福祉大進学の経緯を話した。些細なことかもしれないが、筆者はそこに、大学野球に懸ける佐藤の並々ならぬ覚悟を感じた。

「自分は背番号2桁からスタートしてプロの指名を受けることができた。『今、試合に出ていないから』とか、『自分は無理だから』とか思わずに、思い描いた夢や目標に向かってコツコツと頑張ることができれば、こうやって道を切り開ける。そういうことを伝えたいです」

 胸を張ってそう口にした佐藤の将来的な目標は3割30本。プロの世界でもその目標を叶え、白球を追うすべての球児に夢を与える。

(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)

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