ロッテ福浦の脳裏に残る20年前の開幕戦 本拠地での偉業へ力強く「決めるよ」
デビュー戦は足がガクガクと震えるほど緊張し、ほろ苦い結果に
ついに王手とした。ビジョンに「1999」の数字が映し出されると大きな拍手が沸き起こった。霧雨の中、行われた9月21日のライオンズ戦(ZOZOマリンスタジアム)。福浦和也内野手が1999本目の安打を奏でた。
「打ったらヒットになった。そんな感じ。気持ちだよ。気持ち。どう打ったかも覚えていないぐらいだよ」
ライオンズのエース・菊地雄星と3年ぶりに対峙した。対戦は2015年9月5日のZOZOマリンスタジアム(当時QVCマリンフィールド)以来。その時は代打で登場し、遊飛に倒れていた。第1打席は空振り三振。第2打席は一ゴロ併殺。迎えた3打席目。ヒッティングゾーンを広めて打席に立った。
「なかなか思うような打球が飛ばなかった。ボールに勢いがあり当たってもファウル。2打席目はインコースを引っ張ってああいう結果になった。チャンスだったので申し訳ない気持ちでいっぱい。3打席目は反対方向への意識だけを持って無心で向かった」
先頭打者として迎えた7回。初球は低めのボール球。そして2球目。コンパクトにスイングをすると打球は三遊間を綺麗に抜けていった。一塁ベース上で大歓声に応えるように右手を小さく掲げた。偉業達成に王手をかけた1本は無心の状態でガムシャラに放った安打だった。
今でこそ長年の経験と磨き上げてきたバットコントロールで安打を量産する大ベテランも、原点には「ガムシャラ」がある。初めて1軍で開幕を迎えた時は、打席で足がガクガクと震えた。忘れもしない98年4月4日の大阪ドーム(現京セラドーム大阪)での近鉄戦。3番ファーストでスタメン出場。初の開幕1軍に3番クリーンアップで先発。気持ちが空回りした。5打数無安打。
脳裏に深く残るのは7回の先頭打者として回ってきた打席だ。打ち損ねた三ゴロに思わずヘッドスライディングをした。結果は余裕のアウト。スタンドから失笑が聞こえてくるような状況となってしまったが、悔いはなかった。カッコ悪くてもよかった。笑われてもよかった。とにかく出塁したい。その自分の想いに正直でありたかった。
「開幕でスタメン起用していただいた首脳陣の期待に応えてアピールしようと必死だった。どんな形でも塁に出てチームの勝利に貢献したいという想いだけ。だから、ボテボテの当たりに頭から飛び込んだ。あそこでセーフになったからといって、何かが変わるような場面ではなかったけど、歯を食いしばって飛び込んだら何かが起きるかもと思った。それだけ必死で生き残るためにガムシャラだった。あの頃の想いは25年目になった今でも忘れたくはない。大事な初心だと思う」