巨人連覇の鍵を握った男 村田修一を復活に導いた無言のゲキとは
今年の優勝の喜びはまた格別
村田修一は誇らしげに歓喜の東京ドームを歩いた。9月22日、巨人移籍2年目で経験するリーグ連覇。ようやく仲間入りできたという思いが強かった。移籍初年度はプロ10年間で最も少ない12本塁打。プレッシャーに負け、本来の力を発揮できなかった。それが一転、今年はシーズン途中から4番を務め、8月にはセ・リーグの月間最多安打記録となる46安打を放つなど、MVP級の活躍を見せることができた。
「打つ方で貢献できたと思う。昨年はうれしい気持ちもあったが、一方で悔しさもあった。だから、今年の喜びはまた格別です」
男はそう感慨にふけった。
振り返れば、順風満帆なシーズンだったとは言えない。一時は不調が続き、堂々とした姿は影を潜めた。三振をすると肩を落としてベンチに引き揚げた。原監督も試合後の会見で「ちょっと修一が元気ないね」と名指しすることもあったほどだ。
当時、指揮官は穏やかな口調でその名を挙げていたが、心中は穏やかではなかった。現在の巨人は阿部慎之助が中心だが、主将で捕手の阿部を、できれば、下位打線に置くことが理想だと考えている。そのためには阿部をしのぐ打者が出てきて4番を務めなければならないが、それができるのは村田や今季加入したロペス、ベテランの高橋由伸ら限られた人間しかいない。
そんな候補の一人である村田が、指揮官の目に、特にふがいなく映った出来事がある。5月26日のオリックス戦の1回にリーグ屈指の守備を誇るはずの村田が失策を犯したのだ。すると原監督は「心技体すべてにおいて準備不足」と交代を命じた。1回での交代は明らかな「懲罰交代」。村田は翌日の練習でも原監督から声をかけられることはなかった。