【小島啓民の目】「遠回り」で未来は決まらない―元甲子園V主将、指名漏れも2年後への期待
昨秋ドラフト指名漏れから再出発する畔上翔
2016年が幕を明け、次世代のスター候補たちも始動した。創価大の田中正義投手、東京ガスの山岡泰輔投手ら、今年のドラフトも即戦力投手に注目が集まりそうだ。しかし、その一方で、昨年のドラフトでプロ志望届けを出しながらも、指名を受けなかった選手もいる。日大三で甲子園優勝、法政大でもチームを引っ張ってきた畔上翔外野手は、新天地・ホンダ鈴鹿で新しいスタートを切る。大学、社会人の野球に多く携わり、日本代表チームで畔上を指導した経験のある小島啓民氏が、練習熱心な畔上の素顔を紹介する。
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皆様、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。今年も多くのアマチュア選手の成長と、プロに入っていく選手たちの飛躍を期待したいと思います。そのためにアマ球界に伝えられることを届けていきたいと思います。
今回は、プロ指名漏れを経験し、これまでとは違った新しい気持ちで野球生活をスタートさせる一人の選手を取り上げます。
2015年の10月22日ドラフト会議が行われ、多くのアマチュア選手が来年からプロの門を叩くことになりました。ドラフト報道の裏では、注目を浴びた選手たちが昨年限りでプロのユニフォームを脱ぐというニュースがひっそりと流れ、プロ野球の厳しさがうかがい知れます。指名された選手も同様の時期が来ることを覚悟しておかねばならないですね。これがプロ野球という職業を選択するということだということを……。
プロ野球で活躍した多くの選手が、「活躍できたのは、たまたま、運が良かったんですよ」とよく言います。それだけ、実力は紙一重ということを皆知っているわけです。「1軍監督がファームの試合を観戦した際に、たまたま活躍し、それによって1軍行きの切符を与えられ、それから実績を作りあげた。1軍監督が試合を観戦した試合で活躍していなかったらと思うとゾッとする」ともらしていた選手もいました。プロの世界では、雇用という観念はありません。機会均等の世界ではなく、チャンスすら与えられずプロ野球を去る者も多くいます。本当に厳しい世界です。
私が昨年のドラフト会議で1番注目していたのは、法政大学の畔上翔選手でした。なぜ注目したのかは、2014年台湾で開催されたアンダー21歳以下日本代表選手としてともに戦った仲間であり、更にプロ・アマ混成の中、唯一と言っていいほど、少ない試合の中でスターティングメンバーを最後に勝ち取った唯一のアマ選手であったからです。
21歳以下大会ではヘッドコーチということもあり、畔上とはよく話す機会がありました。彼からも「どうすれば打てるようになりますか」「今の自分の打撃はどうですか」と積極的にコミュニケーションを図りに来ていました。その際に、全国優勝を果たした日大三の六大学同期選手の吉永健太朗(早稲田大)、鈴木貴弘(立教大)、高山俊(明治大)、横尾俊建(慶応大)には負けられないと対抗意識も語ってくれました。