変化する敬遠策 申告敬遠の導入で故意四球は昨季の3倍以上に“激増”
2018年の敬遠数は前年の3倍以上に、リスク軽減で増加か?
野球の戦術の1つに敬遠策というものがある。これは、ピンチの場面でわざと四球を出すことによって強打者との勝負を避けるという作戦だ。塁が埋まることで、野手はより近いベースでアウトを取ることができるという利点もある反面、ランナーを無条件に出すので大量得点のリスクは高まる。2018年シーズンから、NPBでは新しいルールである申告敬遠が導入された。
従来の敬遠は投手がわざとストライクゾーンから大きく外れるボールを投げていたが、申告敬遠の導入により守備チームの監督が意思を示すだけで走者を歩かせることが可能になった。あえてボールを投げることによって生まれるドラマをつぶしかねないという反対意見もあったが、MLBに続いて導入された。この申告敬遠によって敬遠策は果たして変化したのだろうか。
申告敬遠によって、敬遠数は劇的に増加した。各球団の故意四球の数を比較すると、中日、西武、ソフトバンクを除いた9球団が2018年に過去5年間で最多を記録している。12球団の総数では、2018年は285個。2位の2014年が167個と100個以上の差があり、過去5年で最小だった2017年の90個と比較するとその数は3倍以上となっている。2017年と18年で監督が変わった球団はヤクルト、ロッテ、楽天(シーズン途中から)の3球団しかなく、大きな戦術の変化があったとは考えにくい。故意四球の増加は申告敬遠の導入による影響が大きいのではないか。
球団ごとに比較すると、DeNAが最多の56個の故意四球、次いで楽天が36個を記録している。最少だったのは西武でわずか5つしかなかった。DeNAはラミレス監督就任後の3年間で全て最多故意四球を記録している。中日は過去5年で敬遠数が10を超えた年がなく、今年も6つだった。
塁を埋める、強打者との対決を避けるという意味で、申告敬遠と従来の敬遠の本質は変わらない。故意四球がここまで激増したのには、申告敬遠によって敬遠策という作戦がより容易になったのが理由の1つとして考えられる。従来の敬遠では、投手がコントロールミスをしてストライクゾーンに投げてしまう、暴投してしまうなどといったリスクがあった。しかし、申告敬遠にはリスクがない。監督が敬遠という手段を選びやすくなったことは確かだ。
ただ、2017年に申告敬遠を先立って採用したMLBでは、このような急激な敬遠数の増加は見られなかった。導入前の2014~16年の3年間の平均総数は956個、対して導入後の2年間の平均は949.5個とむしろ“微減”している。ワールドシリーズを制したレッドソックスに関しては、今季8個しか敬遠がなかった。
申告敬遠初年度であった2018年シーズン、結果として敬遠数は激増した。導入2年目となる来シーズンでは、申告敬遠はどのような使い方をされるのだろうか。