「愛していますブラザー」イチロー“愛弟子”が地元紙広告に綴った絆の2298字【全文全訳】

ゴードンがイチローへの惜別メッセージをシアトル・タイムズに掲載【写真:木崎英夫】
ゴードンがイチローへの惜別メッセージをシアトル・タイムズに掲載【写真:木崎英夫】

弟分ゴードンから溢れるイチロー愛「アイドル」「同僚?まさに衝撃」「人生の一部として永遠」

 マリナーズのディー・ゴードン内野手が米国での開幕戦を迎えた28日(日本時間29日)、同日付の地元紙「シアトル・タイムズ」に“師匠”と仰ぐイチロー外野手への感謝を綴った異例の全面広告を掲載した。心温まる2298字のメッセージでは、5年間チームメートとして過ごしたレジェンドに対する少年時代から続く絶対的な憧れ、15年シーズンに首位打者に輝くことができた恩人への感謝、そして、溢れるばかりのイチロー愛をにじませている。

 シアトル・タイムズの全面広告でゴードンが公開したメッセージは以下の通り。

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 親愛なるイチロー。最初に、最高の友達でいてくれて、そして、今日まで、僕のお気に入りの選手でいてくれたことに対して、ありがとうと言わせてください。野球を始めようと決断する前、あなたをみて、こう思ったことを覚えています。

「僕みたいに痩せているじゃないか。彼にできるなら、自分だって絶対にできるはずだ!、と」

 野球をプレーしたいと思わせてくれたのはあなたでした。アボン・パークで育った少年時代の自分にとって、あなたはアイドルでした。生まれる前からあったビデオゲームのキャラクターにもイチローと名付けたほどです。

 初めて出会ったは2004年、ヒューストンで行われたオールスターゲームでした。午後3時に父親とフィールドを歩いていましたが、すでにあなたはストレッチをして、準備万端でした。オールスターゲームなのに! 他の誰もそんなことしませんよ!

 誰もが大きな体格でホームランを狙う中、あなたは自分らしく在り続けました。自分の仕事、自分のプロセス、そして、最も重要なことは自分の文化を守り続けました。他の選手が自分たちの2倍の体格だとして、自分にもどんなことでき、野球界で全てのことを成し遂げたいと思えることを、あなたは証明してくれましたね。

 そして、2012年がやってきました。(当時ゴードン所属の)ドジャースはシアトルで対戦することにになりました。ショートからあなたの全ての動きを注視していました。そして、あなたの通算安打数に貢献してしまいました。守備をするよりも、あなたのプレーを見ることに注意を払いすぎていたのです。ごめん、ドジャース。でも、イチローなんだよ。わかってくれるでしょ。

 次の日に、あなたはヤンキースにトレードで移籍しました。打撃について会話を交わす前です。自分は打ちひしがれました。それでも、2015年に僕はマイアミにトレードされて、数日後にあなたはマイアミとサインしたのです。

 狂喜乱舞でした。「ちょっと、イチローさんとついにプレーできるんだ。本当かよ? 嘘だろ。信じられない」と、親友に叫びました。早めに(キャンプ地の)ジュピターに入ったことを覚えています。あなたのバッティングとランニングを見ることができれば、と。やっとあなたが到着した時に、僕はドキドキしながらあなたに歩み寄りました。兄貴、あなたは本当に優しかった。どんな部分でも、僕を助けてくれると言ってくれました。まさに衝撃でした。この日まで「イチと一緒にプレーするだって? どうやって? 小さなアボンパーク出身の僕が?」と自問自答していたのに。

 イチ、この5年間、あなたがどれだけ支えてくれたのか、みんな知らないでしょう。自分がいい時も、悪い時も、坂道も下り坂も経験してきたことを、僕たちは知っています。でも、あなたとの友情は絶対に揺るがなかった。あなたはどんな時でも僕の味方になってくれた。いつでも支えてくれました。僕が過ちを犯した時でも、自分が怪我でフィールドに立てない時にも、応援してくれました。

 今回については、ツイートやインスタグラムの投稿は相応しくないと考えました。出来るだけ大きな声で、僕がどれだけ感謝しているのか、それを正しい方法で伝えたかった。あなたとの友情と指導がなければ、そして、あなたが秘密を教えてくれなければ。ディー・ゴードンという名前の首位打者は存在しなかったでしょう。心配しないで、兄貴。秘密は絶対に言わないから!

 愛してますブラザー! あなたは自分の人生の一部として永遠の存在です。引退生活を楽しんでもらえると嬉しいです。オフの日は会いたいです。頼れるあなたがいなくなることは絶対に寂しいので。

 あなたの弟、デバリアス(本名。ディーは略称)

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 この広告記事掲載の経緯を伝えた「シアトル・タイムズ」によると、ゴードンがアイデアを思い立ったのは21日のアスレチックスとの日本開幕戦後。この試合、イチローの“ラストシーン”で抱擁を交わしたゴードンは、頭を抱えながら二塁方向に一人歩き、大粒の涙を流していた。

 その後、代理人を通じて3月23日に全面広告を掲載する打診を同社に済ませていたという。もっとも、「これはちょっとやり過ぎかもしれないと思った」というゴードンは、イチローに「ヘイ、ちょっと色々やってしまったことがあったんだけど、もしも気に入らなかったら、ごめんなさい。でも、もうやっちゃったよ」とメッセージを送ったことも明かしている。結果的にイチローは受け入れたといい、ゴードンは記事の中で「彼は気に入ったんだ。驚きだったよ」と話している。

 28日の本拠地で行われたレッドソックスとの開幕戦で「9番・二塁」で先発出場し、4打数1安打1得点でチームの開幕3連勝に貢献したゴードン。今もイチローからの教えを胸にグラウンドを立っているに違いない。

【写真】マリナーズのゴードンが地元紙に掲載した イチローへの愛の溢れるメッセージ広告の全容

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