元プロ野球選手のセカンドキャリア 女子野球の指導者になった元ヤクルト外野手の思い

中学女子硬式野球「モンスターレディース」の監督として活動している元ヤクルト・高仁秀治氏【写真:豊川遼】
中学女子硬式野球「モンスターレディース」の監督として活動している元ヤクルト・高仁秀治氏【写真:豊川遼】

ヤクルトの外野手として176試合に出場した高仁秀治氏

 プロ野球選手のセカンドキャリアの中に指導者への転身がある。指導者の中でも女子野球チームの監督になった者もおり、元ヤクルト外野手の高仁秀治氏も、その1人だ。現役時代にヤクルトの外野手として通算176試合に出場した高仁氏は、現在、女子野球チームの監督として後進の育成に努めている。

 高仁氏は1980年ドラフト4位でヤクルトに入団。入団から数年は主に代打として1軍で起用される。1985年には当時、大洋の抑えだった斉藤明雄氏からプロ1号となる満塁弾を放っている。その後は栗山英樹(現日本ハム監督)ともレギュラー争いをするなど、プロ11年で176試合に出場して打率.247、2本塁打19打点の成績を残した。

 引退後はNPB12球団ジュニアトーナメントでヤクルトジュニアチームの監督を務め、現在は関東女子硬式野球連盟(ヴィーナスリーグ)に所属する中学女子硬式野球チーム「モンスターレディース」の監督として活動している。

 現在の女子野球は、男子同様にプロ野球を頂点として大学や社会人をはじめ、ジュニアチームも活動しているが、特に中学生になると野球を続けることが困難となり断念してしまうケースがある。高仁氏が指揮を執るモンスターレディースはこうした問題を解決しようと2013年に結成。関東近郊の女子選手が集まり日々、白球を追っている。

 女子野球日本代表「マドンナジャパン」はW杯6連覇を達成するなど世界でもトップクラスの実力をもつ。国際試合を経験することは選手の今後のプレーや人生において大きな財産となることだろう。高仁氏は2月に香港で行われた女子野球の国際大会「フェニックスカップ」で中学生選抜チームを率いて香港や中国、グアム、シンガポールの世界4か国と対戦した。

 チームは全5試合のうち、コールドゲーム4試合を含む全勝と、圧倒的な実力をみせて優勝。参加していた他国の選手からは「本当に中学生チームなのか」と驚かれるほど圧巻な試合運びを展開していた。こうして国際大会で結果を残した高仁氏。帰国すると自軍で選手たちを指導しながら成長を見守っている。

 普段から女子選手と接する機会が多い高仁氏がみる男女の選手の違いは何なのか。

「女子選手は練習する意義を聞いてくることが多いです。男子選手は指導者から練習内容の指示があるとすぐに行おうとしますが、女子選手は全く逆ですね。この練習をすることで体のどの部分に効果があるのか、どのような意図があってこの練習をするのか、などを話し合います。こうして理解があると選手たちは練習をサボりません」

 モンスターレディースでは主に土日・祝日に8時間の練習を行っており、その中で特に指導者はコミュニケーションに重点を置いている。現役時はプロとして、引退後は後進の育成に重点に置いている高仁氏に中学女子選手に対する想いを聞くと力強く次の言葉が返ってきた。

「私は高校に行ったときに活躍できる技術だけではなく、選手自身の心も鍛えています。今後も野球を続けていく選手にはぜひ継続してほしいですし、もしやらない人でも誰にも負けない強い心を身に付けてほしいと思っています」

 こうして「野球を通じた人間育成」を大切にする高仁氏は選手の成長を願い、1人1人に寄り添う「お父さん」のような存在だ。今後も女子野球選手にとって野球ができる環境づくりのために自ら奔走する。

(豊川遼 / Ryo Toyokawa)

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