「エースの自覚」―西武多和田が2安打完封で今季初勝利「気持ちの入った投球を」
昨季の最多勝右腕が3試合目で初勝利、7回2死まではパーフェクト投球
■西武 1-0 オリックス(12日・メットライフ)
西武の多和田真三郎投手が12日のオリックス戦(メットライフ)で2安打完封勝利をおさめた。昨季の最多勝右腕が3試合目で今季初白星をあげた。
今季1勝目を完璧なピッチングでつかんだ。7回2死までオリックス打線を無安打無四球に抑えた。吉田正にチーム初ヒットを許すと、続くロメロに四球を与えこの日初めてピンチを招いたが、6番・頓宮をセカンドフライに仕留め無失点。8回までを89球でテンポよくまとめた。
しかし、両軍無得点のまま迎えた9回、1死から四球とヒットで塁を埋め、再びピンチを背負った。2死一、三塁で相手4番のロメロに対し、バッテリーは果敢にインコースを攻めた。初球はスライダーで大きな空振りを奪うと、森はインコースにストレートを要求。「詰まって、(内野と外野の)間に落ちて1点入るのが嫌だった」多和田は一度首を振った。それでも森は同じサインを出した。強気な森のリードに「行くしかないと思った」と腹をくくった。4球連続で、インコースにストレートを投げ込んだ。この日の117球目だった。2ストライクと追い込まれていたロメロのバットが空を切った。
口数が多い方ではない。大人しく、自分の感情を大きく表現することもない多和田だが、今年は「エースの自覚」がある。自身初の開幕投手に指名されたものの、開幕から白星が付かず、ふがいない投球が続いていた。「2試合いい投球ができていなかった。もっと気持ちの入った投球をしないといけない」と、打者に向かって行く気持ちをマウンドで全面に押し出した。
3月29日の開幕戦前には「開幕戦は選ばれた人しか立てない。自覚と責任を持って頑張りたい」と意気込んでいた。そんな多和田に現役時代、開幕投手を5度経験している西口投手コーチは「うちに秘めたものをマウンドで爆発させてほしいな」と語りかけた。自覚と責任を胸に秘め、多和田のシーズンはまだ始まったばかりだ。
(安藤かなみ / Kanami Ando)