実に722日ぶりの勝利 広島・福井優也が“復活”勝利を掴んだ理由
初回、マートンの併殺打で開き直ることができた
大声援と「福井コール」に背中を押された。7月27日、本拠地マツダスタジアムでの阪神戦。「ウルッときて、涙が出そうでした。うれしかった」。今季2度目の先発マウンドとなった福井優也は、こう感じながら、9回のマウンドに向かっていった。
先頭の田上を見逃し三振に取って1アウト。続く代打・新井貴には左翼線を破る二塁打を浴びたが、上本を三ゴロに打ち取って、2アウトとすると、この日投じた124球目、145キロのストレートで試合を締めくくった。最後は、今成のゴロを自らつかんで、27個目のアウトを取った。今季初勝利。久しぶりにチームメートと交わすハイタッチに、自然と表情は緩んだ。
立ち上がりは最悪だった。いきなり上本に左翼線への二塁打を浴びると、今成の犠打と、鳥谷の左中間を破る三塁打で1点を失った。わずか6球の間の出来事だった。
「終わったと思った。こんな簡単に打たれるものかと」
4番ゴメスには死球。5回9安打6失点でKOされた5月7日のヤクルト戦(神宮)が脳裏をよぎった。
立ち直りのきっかけは、マートンの二ゴロ併殺打が与えてくれた。最少失点で切り抜け、「あれが大きかった。開き直れた」。2回以降も、度々、走者は許した。三者凡退は2回の1イニングだけ。9回までに9安打を浴び、4四死球を与えた。それでも、「1人1人、次のイニングは考えずに投げた。点差もあったので、1点はOKでいけたのが良かった」と1つずつアウトを積み重ね、本塁だけは踏ませなかった。
福井の白星は、実に722日ぶり。12年8月4日、奇しくも、この日と同じ、本拠地マツダスタジアムでの阪神戦だった。完投勝利となると、11年10月12日の横浜戦(マツダ)にまでさかのぼる。「勝つまでは長かった。今日の試合は早かった」。苦しかった過去に思いを巡らせ、感慨深げに言葉を並べた。