西武熊代が走攻守で魅せる「自分だったらどうしたか…」 栗山の一言で目覚めた準備の大切さ

西武・熊代聖人【写真:荒川祐史】
西武・熊代聖人【写真:荒川祐史】

8回に代走で出場すると同点のホームを踏む、左翼、一塁と守備機会も軽快に

■西武 6-5 ロッテ(15日・メットライフ)

 西武の熊代聖人外野手が15日のロッテ戦(メットライフ)で8回に代走で出場すると、1死満塁から源田の右安打の間に二塁から一気に生還し、同点のホームを踏んだ。“伏兵”の好走塁で、チームは試合を振り出しに戻し、延長11回にサヨナラ勝利を納めた。

 三塁を回り本塁に突入しようとしたところで、捕手・田村の身体が一塁側に流れながら捕球しようとしているのが目に入った。通常のスライディングで本塁を狙うつもりを、とっさにヘッドスライディングに切り替えた。田村が懸命に伸ばしたグラブよりも、わずかに熊代の手が先に本塁に触れていた。ロッテ・井口監督はリクエストを要求したが、「行けるとわかっていた。自信があった」という熊代。リクエストでも結果は覆らず熊代の本塁生還が認められ、これが貴重な同点となった。

 8回に代走で出場し、9回は左翼の守備に就いた熊代。延長10回からは一塁に回り、守備機会も軽快にこなした。今シーズンのスタメン出場はわずか2試合。おなじみとなっている試合前の訓示だけではなく、ベンチでは最前線で声を張り上げ、出場している選手の状況を自らに置き換えてプレーの度に「自分だったらどうしたか」と思案を巡らせた。「レギュラーの選手が夏場も戦ってくれて、今この位置にいる。自分はお荷物にはなりたくない」。強い決心が、プレーに乗り移った。

 チームが2位になった2017年には初めて1軍での出場なくシーズンを終えた。春のキャンプをA班でスタートし、オープン戦まで1軍に帯同していたが、開幕メンバーから外れた。監督室で2軍行きを言い渡され、ロッカーで荷物を整理。前年まで主将を務めていた栗山に「明日から2軍でやってきます」と挨拶をすると、栗山は真剣なまなざしで「腐るなよ」と声をかけた。

 結局そのシーズンは1軍昇格を果たすことはできなかったが「いつ呼ばれてもいいように」と若手選手たちと共に練習に励んできた。この日も負けられない重責の中で、その準備が活きた。試合後、ロッカーで栗山から「ほんま、よかったなあ!」とその働きを称えられると、涙が溢れそうになった。4時間半の死闘を終え、「本当の超総力戦で勝てたので、気を引き締めてやっていきたい」と話した熊代。勝利に貢献した実感が、火照った頬ににじんでいた。

(安藤かなみ / Kanami Ando)

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