弁護士が日本のスポーツビジネスを変化? 米での経験生かし新規事業【パお仕事名鑑 Vol.7】
NPB現役選手を除く国内外のスポーツ選手のマネジメント業務を開始
グラウンドの上で輝く選手やチームを支えているのはどんな人たちなのか。パ・リーグで働く全ての人を応援する、パシフィック・リーグオフィシャルスポンサーのパーソルグループと、パ・リーグインサイトがお届けする「パーソル パ・リーグTVお仕事名鑑」で、パ・リーグに関わるお仕事をされている方、そしてその仕事の魅力を紹介していきます。
パ・リーグ6球団の共同出資により、2007年に設立されたパシフィックリーグマーケティング株式会社(PLM)。グラウンド上ではライバルとなる6球団がビジネス面でパートナーシップを組み「パーソル パ・リーグTV」や「パ・リーグ.com」「パ・リーグインサイト」などのデジタルサービスを提供するほか、6球団共同のイベントやスポンサーセールス、マーケティングなどを行っている。
PLMが現在積極的に進めているのが、パ・リーグの新規事業開発だ。その一環として、NPB現役選手を除く国内外のスポーツ選手・OBOGのマネジメント業務を開始した。今回登場する稲垣弘則さんは日本を代表する大手法律事務所所属の弁護士。事務所の留学制度を利用してアメリカのロースクールでスポーツビジネスと法律を学び、現地の法律事務所でスポーツビジネスでの実務経験を経た後、PLMで新規事業開発のミッションを担っている。まずは弁護士としてスポーツとの関わり方というところから話をうかがってみた。
「アメリカでの留学と実務経験を経て、海外では弁護士がスポーツビジネスに幅広く関わっており、ビジネスの中心にいると感じました。弁護士が契約書や規約を作ったりするだけでなく、ビジネスそのものを行っているんです。球団やチームのオーナーや国際組織のトップが弁護士資格を持っています。久保建英選手がプレーするスペインのマジョルカというチームのCEOも弁護士です。そして、選手のマネジメントやチームとの契約代理交渉を行う、いわゆるエージェントも弁護士が多い。それはなぜかと言うと、スポーツは“権利ビジネス”。知的財産を取り扱うビジネスですから、本来はビジネスを進める上で法律の知識が不可欠なんです」
次第に日本でも変わっていくだろうと稲垣さんは考えている。日本のスポーツビジネスが拡大していく中で、今後は弁護士がスポーツビジネスの中軸を担う役割として必要とされるだろうということを、アメリカでの経験から感じたという。しかし、所属している法律事務所では、スポーツビジネスそのものを行うことは難しい。
「メジャーリーガーのクリスチャン・イエリッチ選手が日米野球で来日することになったときに、イエリッチ選手のエージェントから日本側のマネジメントをサポートしてほしいと依頼があったのですが、うちの法律事務所だけでは十分なサポートはできないと感じて。でも、事務所でできないこともPLMだったらできるかもしれないと思いました。当時、PLMでは選手のマネジメント業務を行っていなかったのですが、ちょうどCEOの根岸(友喜)がこの分野をやろうとしていたタイミングでした」
幸運なタイミング。ここから、いろいろな枠組みでマネジメント業務を開拓していく。早速、ビッグネームがその枠組みに乗ってくれた。
「イエリッチ選手のスポンサーシップをPLMで取り扱うことになり、彼の日本での知名度を上げるためのサポートとして、日本のTV番組への出演をキャスティングしました。また、アメリカでの研修先の弁護士がNBAヒューストン・ロケッツのジェームズ・ハーデン選手と新しい会社を作ることになって、その流れで、ハーデン選手のスポンサーシップもPLMで」
野球、バスケットボールのビッグネームとのコネクション。これはインパクトが大きい。PLMにとって新しい商材の獲得である。稲垣さんは、これをきっかけに現在の役職に就任し、NPB現役選手を除く、国内外スポーツ選手・OBOGマネジメント業務や、リーグスポンサーの営業など、新規ビジネスの開拓を担うこととなる。
「最近ではスポーツ×IT・テクノロジーがトレンドになっています。『Sports Tech Tokyo』という、世界のスタートアップ企業と日本のスポーツビジネスをマッチングさせて新規ビジネスを創出するアクセラレーションプログラムを通じ、日本の野球ビジネスに興味を持った海外のスタートアップ企業とパ・リーグとを結びつけて、今後、パ・リーグの新しいコンテンツやサービスを作っていくような仕事にも携わっています」