広島・永川、引退セレモニーで涙も「泣かずにいられた」報道陣の爆笑誘う
現役ラスト登板は中日大島をストレートで一ゴロに打ち取る
■広島 4-3 中日(23日・マツダスタジアム)
広島の永川勝浩投手が23日、マツダスタジアムでの中日戦で引退試合に臨んだ。15年ぶりに先発のマウンドに上がると、打者1人を打ち取り、17年間の現役生活に幕を閉じた。
クライマックスシリーズ圏内を争う中日との直接対決での先発登板。打者1人限定ながら両監督が事前に「真剣勝負」で合意して行われた。中日・先頭打者の大島に対して、初球は内角へのボール、2球目も内角でストライクを取った後、3球目でファーストゴロに打ち取った。全て141キロのストレートで、全盛期に代名詞だったフォークは投げなかった。
一、二塁間寄りの鋭いゴロをファーストの松山が好捕し、ベースカバーに走った永川は送球をがっちりと受け止めて笑顔で塁上を駆け抜けた。現役最後の打者を打ち取り、マウンドを降りた永川は「大瀬良がいい形で入れるように、無事につなぐことができてよかった」と責任を果たした。最後の投球が終わった後、「ひとつのアウトをとってくれた。よく頑張ってくれた」と緒方監督から声をかけられた。
試合前には長女が始球式を行い、見事なノーバウンド投球を見せた。「あの場面は(涙が出そうで)危なかったが、無事に投げられてよかった」と安堵した様子。降板後はベンチに残り、接戦となった試合を最後まで見守り「ベンチで試合を観るのはもう最後だなと思った。みんなが真剣にやっている中で申し訳なかったが、一喜一憂しながら楽しく観ることができた。すごくいい時間だった」と自身最後となる公式戦を堪能した。
サヨナラ劇のどさくさに紛れて大瀬良から水をかけられたが、「後輩からああやって来てくれるのがカープのいいところ。最後にいい瞬間でした」とチーム愛を実感。試合前から終始、笑顔を見せていた永川だが、試合後の引退セレモニーでは、家族や周囲に感謝を述べる件で涙を流したが、「今日1日、泣かずにいられてよかった」とおどけて報道陣を笑わせた。
報道陣の取材が終わると、最後に「ありがとうございました」と清々しい表情を見せた永川。チームの低迷期を支えた松坂世代の元守護神が、周囲の大きな祝福を受けてユニフォームを脱いだ。
(大久保泰伸 / Yasunobu Okubo)