西武ドラフト1位・高橋光成らがプロ入り前に過ごした“貴重な時間”
「周囲の支え」を知ることの重要さ
昨夏の甲子園で2年生エースとして前橋育英を全国優勝へ導いた高橋光成投手が今年のドラフト会議で西武1位指名を受けた。先月29日には同じ群馬県出身の渡辺久信シニアディレクターから指名挨拶を受けた。高橋は「エースになれと言っていただいた。頑張ってなりたい」と晴れやかな笑顔で語った。渡辺SDからも「エースとして活躍できる素質がある」と絶賛された右腕は、これからプロという未知の世界に飛び込んでいく。
ドラフトから数日後、高橋は母校のグラウンドでバッティングピッチャーをやっていた。「相手チームのエースが速いと聞いたので、練習の手伝いをしようと思いまして」と秋季大会を戦う後輩たちのために、バッティングピッチャーを直訴していた。“プロ”の生きた球を部員たちに投げ込んだ。
翌日には母校のユニホームを着て、大きな声で応援をしていた。まるで現役部員のように、体全体を使って声援を送った。他の部員よりも一回り体が大きいため、すぐにスタンドにいることが分かり、場内の野球ファンから握手を求められた。そんな高橋は後輩たちのため、チームのためにできる限りのことをやっていた。
同様にロッテでドラフト7位指名を受けた高橋の幼馴染み、高崎健康福祉大高崎高の脇本直人外野手も母校の応援席に姿を現し、懸命に母校を応援していた。他にもドラフト後に後輩たちの試合に顔を出した選手も多かった。
ただの応援のように見えるかもしれない。しかし、そんな光景を見たプロ球団のスカウトはそれが貴重な経験であることを指摘する。
プレーよりも選手の素の部分を重視するあるスカウトは「裏方に回ることで、『自分がどれだけの人の支えがあって、これまで試合に出られていたんだろう』と分かることもある。ずっと下級生のころからベンチに入っていたり、レギュラー選手だと、裏方さんの苦労が分からないまま、プロに入ってしまうことだってある。高橋もずっと主力で活躍していた。だからプロに入る前に、こういう経験をしたということはこれからの野球人生につながる。知っているのといないのとでは大きく違う」と話す。
短い間だったが、高橋は上級生になってから経験できなかった貴重な時間を過ごすことができた。ドラフト1位右腕は周囲の支えの大切さを実感し、プロへと戦いの場を移していく。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count