プロ初先発初勝利のホークス石川、数々のアドバイスに想いを込た全力投球
最大のモチベーションは「応援してくれる人のため」
育成出身者が救世主となった。ソフトバンクの石川柊太投手。31日の中日戦(ヤフオクD)でプロ初先発すると、6回2失点の好投でプロ初勝利をマーク。こちらも自身初のお立ち台に立つと、緊張の面持ちで「当たって砕けろ、と。初回から点を取ってもらって、気持ちが楽に投げられました」と初勝利の喜びを口にした。
打者3人に投げた27日の日本ハム戦(札幌D)から中3日。先発投手陣にケガ人や不振が相次ぎ、突如として回ってきた初先発の舞台だった。「中継ぎからで、先発やってなくて中3日。準備も出来てないし、思い切りいっちゃえ、みたいな感じでした。打たれても、まあそんなもんでしょ、くらいの気持ちで投げました」。気負いなく、真っさらなマウンドに上がった。
初回を3者凡退に切って取ると、150キロを超える真っすぐと、大きな曲がりのスラーブを軸に、中日打線に向かっていった。3回に大島に適時打、4回にゲレーロにソロ弾を浴びたが、いずれの回も最少失点に留めた。6回6安打2失点で91球。無四球のピッチングに「自分の中では四球ゼロは意識していたこと。課題にしていたことなので、良かった」と笑った。
「監督からいいこと教えてやるよって。『テンポが悪い時は良くない時』と言われました。テンポのことは野手の人にも言われること。意識するようになった。テンポを早めた方がノッていけると思った」
立ち上がりから、短い投球間隔で次々にボールを投げ込んだ。「(投手統括コーチの)倉野さんからも、1球目から全力でバテてもいいから、と。松田さんからも、全部全力でいけ、と。そう言ってもらえたのが良かった」と、立ち上がりから全力で投げ、1つ1つのアウトを積み重ねたことが、6回まで投げ抜けた要因だった。
2013年の育成ドラフト1位でプロ入り。昨季途中に育成から支配下を掴み取り、今季でプロ4年目。育成から這い上がってきた苦労人のように思えるが、「(育成の時のことは)あんまり覚えていないんですよね。辛いとかは感じない方なので。やることやってダメなら、ダメなんだろうというスタンスでやってきたので」と、本人にそういった意識はない。
最大のモチベーションは「応援してくれる人のため」で、「それだけしか原動力にならない」とまで言う。その最たる人が両親。記念のウイニングボールは両親に贈るという。「どんな時も味方で、後押ししてくれた存在。急遽の先発だったので、今日は来られなかったんですけど、結果を報告出来るのは嬉しい」。苦しい台所事情の救世主。両親だけでなく、工藤公康監督にとっても、孝行息子になったことだろう。
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福谷佑介●文 text by Yusuke Fukutani