西武ニールの連勝を止めた“影の立役者” 鷹の韋駄天に元盗塁王も「見た中で1番速い」
三遊間に転がせば「非常に高い確率」で内野安打
■ソフトバンク 5-4 西武(31日・PayPayドーム)
“足で侍ジャパン入りした男”ソフトバンクの周東佑京内野手がレギュラー獲りを進めている。7月31日に本拠地PayPayドームで行われた西武戦では「1番・二塁」で先発出場し4打数2安打。5-4で勝利をものにするキーポイントとなった。
24歳の周東の売り物はなんといっても、50メートル5秒7の快足だ。2017年育成ドラフト2位で、東農大北海道オホーツクから入団。1年目の2018年にウエスタン・リーグ盗塁王に輝き、昨年3月には支配下選手登録。主に代走として起用され25盗塁を決めると、11月の「プレミア12」で早くも侍ジャパンに選出され、足のスペシャリストとして活躍した。一足飛びの出世ぶりである。
昨年までソフトバンクでコーチを務め、自身も現役時代に1992年セ・リーグ盗塁王を獲得するなど“韋駄天”として知られた飯田哲也氏が「僕が今まで見た中で1番速い選手」と感嘆するほどだ。今季は左打ちの打撃でも成長をうかがわせ、この日で4日連続5度目の1番スタメン。守備は二塁と遊撃をこなす。
この日、1回に西武先発ニールの初球のツーシームをしぶとく三遊間に転がし、守備の名手の遊撃・源田がさばいて間髪入れずに送球したものの、周東は俊足を飛ばし悠々内野安打を稼いだ。3点ビハインドで迎えた3回1死一塁では、同じくニールのツーシームをジャストミートしセンター前ヒット。この1打が続く今宮の2点三塁打、中村の同点適時打、栗原の勝ち越し打へとつながっていった。
2打席目の中前打に「一挙4点のビッグイニングを作る上で大きかった」
4回2死走者なしでは、セーフティバントを試みる一幕もあったがファウルとなり、結局左飛。7回1死走者なしでは、西武のドラフト1位ルーキー・宮川に対し、初球の内角高め150キロ速球を打って出て一邪飛に倒れた。4打席中3打席で初球を打ったことになる。
飯田氏は「昨年までは三振とフライの多い打者でしたが、今年になってコンパクトなスイングが身に付きつつあります」と評し、「彼の持ち味が最も生かされたのが、1打席目の内野安打です。あのコースに打球が転がれば、内野安打になる確率が非常に高いわけですから、それを生かさない手はない。コーチに言われるのを待つのではなく、自分の持ち味とは何かを考え、生かす道を探る姿勢が大事だと思います」と指摘する。
「2打席目の“つなぎ”のヒットも、一挙4点のビッグイニングを作る上で大きかった」と付け加えた飯田氏。一方で、「初球から打つことは決して悪いとは思わないが、4打席目のように、あっさり打ち上げるような打撃をすると首脳陣はがっかりする。しぶとさを追求してほしい」と注文を付けた。
今季もパ・リーグ首位に立っているソフトバンクでは、周東の他にも若手が育ち、チーム内競争を激化させている。飯田氏は「松田宣が極度の打撃不振に悩んでいる三塁には、今年3月に支配下登録された大砲リチャードがいますし、外野も釜本、真砂らが実力を付けていて、現在打撃不振の上林あたりはうかうかできない。控えや2軍の選手にもどんどんチャンスを与えてほしい」と語る。まずは当代随一の韋駄天の、レギュラー獲りの行方が注目される。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)