なぜ初回&6点差でもスクイズ? 鷹・工藤監督の1点への貪欲さと脳裏にあった“悪夢”
初回に3点差となり連続スクイズ、6点差の4回にもセーフティスクイズを仕掛けた工藤監督
■ソフトバンク 9-1 日本ハム(28日・PayPayドーム)
ソフトバンクは28日、本拠地PayPayドームで日本ハムと対戦し、9-1で大勝した。初回に栗原の2ランやいきなりのスクイズなどで5点を奪って逆転。2回には柳田が特大の19号2ランを放ち、序盤で大量リードを奪い、今季最長の6連勝。60試合目を終えて35勝23敗2分、今季最多の貯金12での単独首位でシーズンを折り返した。
ソフトバンクは初回、周東の内野安打、中村晃が右前安打で無死一、三塁とし、柳田の二ゴロの間に1点を先制。さらにグラシアルの適時二塁打、栗原の初の2桁本塁打に乗せる10号2ランでリードを広げた。ここで驚きだったのは、続く1死二、三塁で甲斐に工藤公康監督が託した策だった。初回からいきなりスクイズ。これを甲斐がキッチリと決めてリードを4点に広げた。
さらに、失敗に終わったものの、続く川瀬の打席でも初球、3球目にセーフティスクイズを、さらに5球目ではヒットエンドランを仕掛けた。7-1で迎えた3回の攻撃前にはベンチ前で円陣が組まれた。そして、6点差に広がった4回1死満塁のチャンスでも、甲斐の打席でセーフティスクイズ。2度目以降は成功こそしなかったものの、点差が開いても手を緩めることなく、1点を貪欲に奪いにいく姿勢が際立った。
試合後、工藤公康監督は「点がたくさんあって悪いことはない。正直に言うと、過去に6点差を逆転されたこともありましたし、あそこで気を抜くわけにはいかなかった。次の1点が両チームにとって大事だと思っていたので、緩めることなくいってもらいたい気持ちもあって円陣も組んでもらったり、させてもらいました」と語った。
工藤監督の言う「過去」とは、7月25日の日本ハム戦のことだ。初回に4点、2回に2点を奪って6点をリードしながら、日本ハムの猛反撃を受けて、結局9-7で逆転負けを食らった。序盤で大量リードを奪っても、指揮官の脳裏には1か月前の“悪夢”が焼き付いていたよう。だからこそ、緩みそうになる中盤以降でも1点を取りに行く野球、大味にならないように、タクトを振るった。
今季最長の6連勝とし、60試合目を終えて35勝23敗2分の貯金12。7月上旬には5位に沈んでいたものの、蓋を開けてみれば、2位ロッテに2ゲーム差をつけての単独首位ターンだ。「日々新たにという気持ちは常に持って、明日は明日の新しい1日が始まりますので、そこに全力を尽くして頑張っていきたいなと思います」と語る工藤監督。1点に貪欲な姿勢と、それを体現できる選手たち。毎年のように優勝を争うソフトバンクの強さの原動力と言えるだろう。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)