原監督から猛ゲキも…元巨人外野手が語る常勝軍団での日々「12、3回の肉離れ」
巨人で俊足巧打、強肩でファンを魅了した橋本到さんは現在、アカデミーコーチ
天気を気にしながら、車から橋本到さんは降りてきた。場所は都内の緑地公園の駐車場。上空は曇っている。予報は雨。子供たちの笑顔には会えないかもしれない。巨人で10年、楽天で1年プレーし、昨年限りで現役を引退した橋本到さんは今、子供たちで野球の魅力を伝えるジャイアンツ・アカデミーのコーチとなった。この日も指導のため、ユニホームを着て、自宅からやってきた。
週に5日、主に5~6年生に野球を教えている。感覚でやっていた野球から、言葉にして伝える野球に。年齢が下がれば、下がるほど、教えるのが難しい。
「最初は戸惑いましたよ。アカデミーコーチ経験者の藤村(大介、現・巨人3軍コーチ)さんや、田中大二郎さん(現・巨人スコアラー)、阿南(徹、現・巨人広報部)さんなどに聞きながら自分なりに学びました。噛み砕いて、わかりやすく。時には自分がどうだったかな、と考えたりもしていますね」
指導中、ふと、時が止まることがある。「トップの位置をしっかり取ってから振り出しなさい」「もっと軸足に体重を溜めて打ちなさい」。子供たちへの言葉は思い返すと、現役時代、自分が打席に入る時の確認事項だった。
「言うのは簡単ですよね……もっと上手に(野球を)やればよかったという思いもあります。小さいことかもしれませんが、わかっていても、できないことがありました。教えているうちに思い出して、また野球がやりたいなと思う時もやっぱりありますね」
遠い空を見つめる。1年前の10月、金銭トレードで移籍した楽天から戦力外通告を受けた。12球団トライアウトを受験も、NPB球団からオファーはなかった。独立リーグからの声はあったが、NPBにこだわり、現役引退を決意。古巣から球団職員としてオファーがあり、ありがたく受け取った。怪我に泣かされた現役生活に終止符を打った。
「現役中は12、3回、肉離れをしました。体のメンテナンスを怠っていたわけではないのですが、すごい選手がいる中で、体の小さな僕が大きな選手に勝つためには、必死というか、全力で立ち向かっていくしかなかった。敵わない相手と思っても、現実と向き合った。もたなかったのかな……」
橋本さんは指折り数えながら、ラミレス氏(現・DeNA監督)、高橋由伸氏、谷佳知氏、長野久義外野手(現・広島)、矢野謙次氏(現・日本ハムコーチ)、鈴木尚広氏、亀井善行外野手、松本哲也氏(現・巨人3軍コーチ)ら当時の外野陣の名前を挙げていった。彼らに割って入るには相当な覚悟と技術が必要だった。手を抜いたら吹っ飛ばされる。そんな強く、高い巨大戦力の壁だった。
「体の大きい人には負けたくなかったです。自分自身に自信もありましたから。ただ、力の差を痛感する場面もありました。2年目に1軍に上がることができましたが、外野のメンバーは凄すぎました。雲の上の存在の人たちばかりで……」