西武・辻監督、大逆転CSへ山賊打線から“脱皮” 黄金期さながらの緻密な戦術とは
不振の山川をスタメンから外して小技や足を絡めたタクトにシフト
今季はずっとBクラスに低迷していた2年連続パ・リーグ覇者、西武が22日までの対ロッテ3連戦に3連勝。残り16試合にして、にわかにクライマックスシリーズ(CS)進出圏の2位ロッテへ3ゲーム差に迫った。辻発彦監督は奇跡の大逆転CS進出へ向け、冷静にそろばんをはじいている。
「状態のいいソフトバンクさんと7試合も残っているし、楽天さん、日本ハムさん…これからが大変だと思います」。辻監督は自分を落ち着かせるように言ったが、もちろん表情は明るい。
まずは23日から、優勝マジックを6としているソフトバンクと敵地PayPayドームで3連戦。一方でCSを争うロッテは、今季16勝3敗1分とカモにしているオリックスと3連戦だけに、西武にとって、この3日間が最初の難関になる。今季8勝8敗1分(22日現在)と互角のソフトバンク戦が、残り16試合のうち最多の7試合を占める。10勝8敗の楽天とは残り5試合。日本ハムとはわずか3試合とはいえ、今季7勝14敗と大きく負け越しているだけに不気味だろう。
1試合もないがしろにできない展開で、辻監督の戦略・戦術も変わってきた。開幕当初は4番・山川を中心に不動のオーダーを模索していたが、ここにきてデータや調子を見ながら、縦横無尽に入れ替えている。22日のロッテ戦では、相手先発の小島に通算16打数7安打、対戦打率.438(試合前時点)と相性のいい栗山に、今季4試合目の4番を任せ、いきなり1回に先制左犠飛。通算対戦打率.467(同)で5番に据えた外崎は、6号3ランを含む3打数3安打3打点の大活躍だった。一方、前日まで4番を張っていたメヒアは7番に下げ、打率.212の不振にあえぐ山川を3試合連続でスタメンから外した。
また、今季は自慢の“山賊打線”の破壊力がいまひとつとあって、小技と足を絡めた戦術にシフト。この日は、2本塁打を含む10安打7得点で打ち勝ったように見えるが、ほとんどの得点シーンに送りバントと“足攻”が絡んでいた。
1-1の同点で迎えた4回には、無死二塁から木村が送りバントで走者を三塁に進めた。メヒアの中飛は浅く犠飛にはならなかったが、続くスパンジェンバーグの勝ち越し2ランにつながった。5回には先頭の金子が左前打で出塁し、続く源田の送りバントで二進。さらに、森の3球目に三盗を決めチャンスを広げた。相手の虚を突いた攻めが、外崎の3ランを呼んだ。
そもそも1回の先制シーンも、無死一、二塁で3番の森が初球にバントを試みたが、ファウル。しかし2球目の中飛で二塁走者の金子がタッチアップから三塁を陥れ、そつなく栗山の犠飛につなげた。
試合後に「久々に取ったね、点を」とおどけた辻監督。自身の現役時代のプレースタイルを思わせるような、小技と足に活路を見出そうとしている。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)