不動心と変幻投球が導いた7回“ノーノー”の衝撃 鷹ムーアが巨人を圧倒できた訳
初回の窮地にも「『今投げるこの1球が大事な球』と思って投げている」
■ソフトバンク 4-0 巨人(日本シリーズ・24日・PayPayドーム)
24日にPayPayドームで行われた「SMBC日本シリーズ2020」第3戦で、ソフトバンクのマット・ムーア投手が、巨人打線を相手に7回無安打の好投を見せた。味方のエラーや四球で走者を出しながらも、ヒットは1本も許さず、7回無失点で降板した。
初めての日本シリーズ登板とは思えない落ち着いたピッチングで巨人打線を圧倒した。初回の先頭打者は遊ゴロに打ち取るも、これを牧原大成が送球エラー。いきなり無死二塁のピンチを背負った。それでも後続をしっかりと抑え、無失点で切り抜けた。工藤公康監督も「あの初回に点を与えなかったことが大きかった」とムーアの粘りを称えた。ムーア自身は、初回の心境をこう振り返る。
「いつも『今投げるこの1球が大事な球』と思って投げているから、特に意識はしなかった。たまたまエラーで出たけど、自分が打たれて二塁に進めることもある。どういう経緯で二塁に行ったかは関係なく、この1球で自分ができるベストなことをしようと、それしか考えてなかった」
その後も四球や自らのエラーで走者を背負いながらも淡々と投げ続け、7回までノーヒット投球。8回からはモイネロにマウンドを譲った。降板については「監督が勝つための最善の策を取っただけ。僕は選手だからその決断に従うだけだよ」と気にする素振りは見せなかった。
「試合前から高ぶるものがあったけど、すごく楽しめた。晃がホームランを打ってくれてからは、大きく深呼吸できるような感じで投げることができた」と自らの投球を振り返ったムーア。この日は得意とするカットボールではなく、カーブを多投して巨人打線を料理していった。「最後の2試合でもカットは投げていないし、今日はカーブが良かったからね。“カーブの日”だったということさ」とニッコリ笑った。
ここまで日本での生活を支えてくれた愛妻が、2人目の出産のためにアメリカに帰国。12月初旬には生まれる予定だというが「1人目も予定日より1週間早く産まれてきたからね」と、パパとしては少し気がかりな様子。日本シリーズ終了後にはすぐに家族の元へ旅立つ予定だが、「もちろん持って帰るよ」という日本シリーズでのウイニングボールが何よりの手土産となりそうだ。
(Full-Count編集部)