さよなら、高木竜。愛のない言葉が招いた中日の悲劇

対照的だった落合前監督のチーム運営

 対照的なのは落合前監督だ。落合氏は野手出身ということもあり、一切、投手のことに口出しをしなかった。「そういうことをするとうまくはいかない。投手のことはオレにはわからない」と信頼を置く森繁和投手コーチに一任。森コーチがイエスと言えば、逆らわずに首を縦に振った。

 07年、日本ハムとの日本シリーズで山井大介投手が8回まで完全試合を達成する勢いだったが、森コーチがストッパーの岩瀬仁紀に代えると判断したとき、何の文句も言わなかった。それだけ周囲に対する信頼は厚かった。

 その落合体制から一転、この2年は「内紛」という言葉がついて回った。5月にはチームの主軸である井端弘和と守備のカットプレーを巡り、一触即発の状況に。不満げな表情で井端がベンチ裏に消えていくと、すぐさま鬼の形相で追いかける高木監督の姿がテレビカメラにとらえられ、ファンの間でも波紋を呼んだ。その後、両者は和解したと報じられたが、そう簡単に溝は埋まらなかった。

 指揮官の発言がチーム内にもたらす影響は大きい。一流とされる監督は、試合後に発する言葉によって選手たちのモチベーションを高めることもできる。だが、高木監督の場合はそのコメントの多くがマイナスに働いた。チーム内の不協和音が際立ってしまったこの2年は、一昨年までのような投手力も失われた。球団首脳はもう高木監督との契約延長はないと断言する。

 すでに後任候補が聞こえ始めている中、果たして誰が次期監督に就任するか。いずれにせよ、チーム再建には、リーダーと部下の信頼関係や対話を再構築する必要があるに違いない。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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