【イチロー4000本安打の価値】イチローの言霊(後編)
4000本到達のペースは、自分の中ではちょっと遅い
――1本目と4000本目で野球に対する気持ちはどう変わったか?
「18のガキんちょは、野球のことなんて何も知らないんですよ。かといって今日の僕が知っているかといえば、それもクエスチョンなんですけど。まぁ当時よりはね、プロ野球選手とはこうあるべき、自分の信じている哲学は生まれてきた。18歳ではそれは無理。全くありませんでした」
――5000本、6000本は見えているのか?
「このペースも僕の中では遅い。もう少し早くできたら。日本でも最後20試合くらい出られない時期があった。もったいない。ちょっと遅い。このペースは。僕にとってはね。自分の中でまだ変化はない状態で、年齢に対する僕以外の人の捉え方で煩わしいことはいっぱいある。35歳を超えて生まれてきたんですけど、そういうことと戦うことはとてもストレス。時間という概念は人間が作ったものだと思うけど、もしそれがなかったとしたら、僕は一体いくつに見えるのか。色んなことが前に進んでいく中で、僕が使っている野球の道具は最高のものなんですよ。で、僕がしているトレーニングも、それは最高かどうかは人によって違うと思いますけど、何十年も前の人たちと比べた時に、考えられないようなトレーニングなんですよね。それを続けている僕が、その括りで評価されるのは残念ですね。ある年齢ならこうなっていてほしいという思いが垣間見えて嫌なんですよね。それは、先輩たちがなかなかやってきてくれなかったので、そういうきっかけをつくるのは僕たちの使命だと思う。アメリカでもある。日本でもよく似ていますよ」
――そういう考え方をどうすれば変えていくことが出来るのか?
「それは具体的な例が出てこないと変えられないことなので。それはもう何十年もかかることなんでしょうね、きっと。でも、こういうことは何かを発したとしても、そこに実例がないと説得性がない。そういう選手がたくさん生まれることが、一番影響を与えることになるんじゃないでしょうか」
【了】
【特集・イチロー4000本安打の価値】
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count