費用対効果は度外視? メジャーリーグ高年俸の実情
“贅沢税”も年俸の高騰に歯止めはかけられない
メジャーリーグ機構(MLB)は戦力の均等化を目指し、チーム年俸総額が1億7800万ドル(約176億円)を超えた場合に“贅沢税”を徴収している。これは年俸の高騰化を防ぐことにもつながるかと思われたが、実際にはあまり関係ない。
超過分に対してかけられる“贅沢税”の割合は、税の支払いが続けば続くほど上がっていく。例えば、11年連続で支払い続けているヤンキースは、昨年は超過分の42・5%、今年は同制度で最大の50%になった。しかし、昨年、決まった新労使協定では「1度、基準を下回れば、翌年から税率は17・5%に引き下がる」と変更されている。しかも、14年には上限が1億8900万ドル(約187億円)に引き上げられる。つまり、この1年だけをクリアすれば、2015年からどんなに年俸総額が上がっても、膨大な“贅沢税”を払わなくて済むことになるのだ。抜け道はたくさんあるだけに、年俸の高騰化に歯止めはかからない。
ヤンキースが田中獲得に本腰を入れられるのも、これが理由の一つだ。仮に田中を獲得できた場合にも、プホルスやハミルトンのように2014年だけ年俸を抑え、次第に上昇していく契約にすれば、何の問題もない。しかも、落札額は年俸総額には含まれないため、いくらでも投資できる。つまり、田中にも大型契約は十分に可能なのだ。もちろん、ドジャースが落札すれば、大型放映権料の恩恵を受けることにもなるだろう。
Aロッドに限らず、1人の選手に年俸20億円を払うほどの価値があるかは、微妙なところだ。ただ、超高額の放映権料の影響で、費用対効果は度外視されている部分も多い。一方で、高額年俸の選手に対して、それに見合うだけの活躍をしているかを判断し、歓声やブーイングを飛ばすのもファンの楽しみの1つだ。今オフには、ヤンキースをFAとなったロビンソン・カノが、契約延長に向けて10年3億ドル(約296億円)という莫大な要求をしているとされている。桁違いの年俸に注目してメジャーの試合を見るのも、面白いかもしれない。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count
※FA移籍に関する補償制度。現所属球団が同オファーを提示した選手が、他球団へFA移籍した場合、見返りとしてドラフト指名権を得られる。