野球にも「チャレンジ」!? メジャーのビデオ判定拡大とは
ビデオ判定拡大への期待と不安
マンフレッドCOOは、記者会見で「もっと正しく試合を裁きたい」と切実に訴えている。このほかには、外野手がライナーを地面ギリギリで捕球したかどうか、さらには盗塁のアウト・セーフなど、これまで誤審が多かったプレーの判定で「チャレンジ」が使われることになりそうだ。
ただ、問題がないわけではない。例えば、審判のプライドとの兼ね合いだ。今年5月8日のインディアンス―アスレチックス戦ではビデオ判定でも誤審が覆らなかったことが一大事となった。1点を追う9回、アスレチックスのアダム・ロサレスが放った打球は、左中間フェンスの黄色い判定ラインを越えたように見えた。しかし、審判は本塁打と認めずに二塁打に。テレビでのリプレーでは明らかにラインを越えていることを確認できたが、審判団はビデオ判定でもジャッジを覆さなかった。アスレチックスのボブ・メルビン監督は猛抗議で退場となり、チームも1点差のまま敗戦。その後、誤審を認めたMLBのジョー・トーリ副会長が「責任審判によると、判定を覆す確証を得られなかったということだった」と説明しながらも「審判団は映像を検討できる状況にあった」と批判する事態へと発展している。
また、試合のスピード感が失われることへの心配もある。チャレンジの度にプレーが途切れれば、ゲームの熱が冷めてしまう可能性が高い。マンフレッドCOOも「試合のペースは重要だ。我々は可能な限り小さな混乱に収めたい。判定が正しいことを確認したいが、試合のいい流れも維持したい」としている。
ちなみに、日本でも2010年からメジャーリーグ同様に本塁打に限定してビデオ判定が使われている。ただ、その他のジャッジでは問題となることも多い。今年の日本シリーズ第2戦では、楽天の1点リードで迎えた9回2死1、3塁で藤田一也のセカンドゴロがセーフと判定され、騒動となった。テレビのスロー再生で見る限りはアウトで、「誤審」と断定する報道が多かった。メジャーで規則が変更されれば、日本でも同じように改革を求める声が高まるかもしれない。
誤審もスポーツの一部という見方もある。ただ、人間の間違いから生まれる悲劇は必要だろうか。逆に、ビデオ判定の拡大、「チャレンジ」が導入されることによって、新たなドラマが生まれることもあるだろう。来季、メジャーでどんな影響が出るのか、日本の球界関係者、ファンも気になるところだ。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count