今季引退の男が魅せた感動の瞬間 愛息の言葉を力に変えて
最後に格好いいパパを見せられた
父親としての威厳を示したいという思いが、打球に力を与えていた。涙で視界がにじむ中、横浜DeNA・小池正晃外野手(33)はダイヤモンドを回った。引退試合で魅せた意地の2発。プロ最後の打席でのホームラン。10月8日の本拠地での阪神戦は野球ファンの心に残る一戦となった。
試合後のコメントはなんとも言えない響きを伴って、聴衆の心を打った。
「子供たちには辛い思いをさせてしまったときもあった。格好悪いパパだったけど、最後の最後に格好いいパパを見せられたんじゃないかな。本当にありがとう」
妻と3人の子供も、涙が止まらなかった。2013年のプロ野球は、広島の前田智徳(42)、ヤクルトの宮本慎也(43)、阪神の桧山進次郎(44)ら名プレーヤーたちがユニホームを脱いでいった。彼らの実績には及ばないが、引き際で見せた格好よさなら小池も負けていなかった。
プロ野球選手であっても自宅に帰れば、一人の父親である。ナイターで帰宅すれば大抵の場合、子供たちはもう眠りについている。幼稚園、小学校に通う年齢ならば、逆に朝は眠っている父を起こさないように、子供たちは気を使いながら家を出ていく。1週間のうちゆっくり話ができる時間は、遠征や試合のない月曜日くらいだろうか。
選手は子供がテレビで自分の試合を見ていることを夫人から聞かされると、何にも代えがたい力になるという。子供たちはユニホームを着てテレビの前で応援し、活躍すれば歓喜し、できなければ落胆し、時には怒りをあらわにする。子供は父の一番のファンなのかもしれない。
子供を持つ野球選手の何人かに話を聞いたところ、子供にされて「辛いこと」の共通点が3つあった。