マー君の寄付はアウトか? 新ポスティングシステムで懸念される問題とは

楽天は最終的にどのような判断を下すのか

 では、今回のマー君の場合はどうなのか。新制度では、選手に提示するオファーの内容が球団を決める上で判断材料の1つとなる。選手が大型契約を結び、その中から一部の金額が旧所属球団へ流れれば、当然、「裏金」となる。これに該当する可能性があるというのが、MLB側の見解だ。今回の楽天と田中の間でやり取りされたことは、メジャー球団からのお金が直接、旧所属球団に流れるような露骨なやり方ではないが、MLB内では今後に向けて「抜け道」を作っておきたくないという意思も働いているはずだ。

 ただ、今回、MLBは事実を正確に把握する前に、楽天に対して警告を発した可能性もある。田中が寄付を行うのは、あくまで球場施設の管理などを行う宮城県となる見込み。楽天に直接、お金が入るわけではないことがポイントだ。球団としても事前に条文をしっかり把握しており、抵触することにはならないとの判断を下していた。おそらく、MLBはこういった細かい部分までは知らなかっただろう。

 ただ、協定で「NPB球団」と表現されているものの中には、関係団体が含まれるケースもあるという。今回、問題となるのは、楽天の関係団体の中に宮城県が含まれるか、という点だ。実際に寄付が行われた場合、調査を行うのはMLB側で、NPBが判断をするわけではない。つまり、MLBが“アウト”と言えば“アウト”になる可能性が高い。結果的に「今回のMLBの指摘を守っていれば……」となってしまう危険性もあるわけだ。楽天は協定を破る気はないことを明言しており、危ない橋を渡るようなことは出来ないのではないか。

 一連の騒動で腑に落ちないのは、この寄付という発想が、田中の球団への純粋な感謝の気持ちから出たものであり、決して不正行為を目的としたものではないという点だ。この「善意」に対してMLBが目くじらを立てていることに、納得できないファンも多いのではないか。ただ、MLB側からすれば、直接的であっても、間接的であっても、旧所属球団に譲渡金以外のメリットが出るような形は容認できない。田中の寄付についても、スタジアムの改修等に寄付金が使われれば、結果的にはメジャー球団が支払った金で楽天が恩恵を受けることになる。このようなケースに目をつぶれば、なし崩し的に不正行為の横行につながっていく可能性もある。

 新ポスティングシステムで譲渡金が2000万ドルに抑えられたことが、そもそもの原因とも言える。ただ、制度が決まった以上は、これを守ることが求められる。一方で、田中の思いを何とか形にできないものか、と感じる人も少なくないだろう。楽天は最終的にどのような判断を下すのだろうか。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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