投票権の不正譲渡の発覚で物議 米国野球殿堂入りの選出方法における是非とは
以前から問題提起がなされていた選出方法
選出方法に関しては、以前から問題提起がなされていた。1つ目は、候補選手が増加する中、最大10人という投票制限は不公平だという意見。2つ目は、いわゆる「ステロイド時代」にプレーした選手は、殿堂入りにふさわしいか否かという問題。そして、3つ目は、テレビやインターネットの普及により、メディアのあり方が変化する中、BBWAA会員しか投票権を持たないのはおかしいという意見だ。実は、これらについては、年に少なくとも3回開催されるBBWAA総会で、毎回いろいろな意見交換がなされている。
最大10人という投票制限に関しては、現在、BBWAA内に特別委員会を設けて、その妥当性について検証作業が行われている。今年は候補選手として36人が名を連ねた(別表)。その中から10人を選ばなければならないのは至難の業。今年は、元アストロズのクレイグ・ビジオが得票率74.8パーセント、投票数にして2票で涙を呑んだ。一方で、今年の有効投票数571票のうち、10人という最大枠を使った票は半数をやや超える程度。平均8.4人への投票で、10人という枠を使い切っていない投票者がいるという現実もある。
ステロイド時代の選手に関する対応は、個人の信念に頼るしかない。以前、BBWAAで統一見解をまとめるべきだ、という意見も出たが、結局は、投票権を持っている個人の裁量と意見に任せるべきだ、という見解で落ち着いた。
ステロイド時代の象徴とも言えるバリー・ボンズ氏は、今年も198票(34.7パーセント)を獲得している。だが、CBSスポーツのジョン・ヘイマン記者のように「ステロイド疑惑のある選手には投票しない」という信念を持つ投票者もいれば、ドジャースを担当するケン・ガーニック記者のように「公平を期するためステロイド時代の選手は誰にも投票しない」とジャック・モリス氏しか選ばなかった投票者もいる。ステロイド時代、そしてステロイドが禁止薬物に指定されて以降に違反した選手に対する対応は、これからも引き続き議論が重ねられるはずだ。